「ネットで公開すると売り上げは落ちる」は本当なのか

著書を無料公開した「日本版フリー」の衝撃
現代ビジネス

坪田 保険の何に対してお金を払っていたかがこの本で判るようになるのと、似ていますね。さきほど私は書籍にはストーリーが求められるというお話をしました。しかし世の中は、そうではない方へ動いています。

 東浩紀さんが、『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』 (講談社現代新書)の中でこんなようなことを書いています。昔の人は、部分を理解するためにも全体を理解しようとした。けれど今は違う。全体をわかろうとはせず、知りたいところだけを知ろうとする。

 これは、私たちのグーグルへのアクセスを見てもその通りです。それなのに書籍はストーリーという全体を作って読ませようとしています。私は、これはもっとインデックス化されていいと思います。ストーリーもあっていいのですが、前後関係にとらわれず、つまみ食いされても構わないと思うのです。

 ウェブのいいところは検索性。これは紙ではできません。そう考えるとPDFにしただけでは中途半端です。検索性を高めて断片的に読んでももらい、では網羅して読むにはPDFは読みづらいので本を買ってもらうというようになればいい。

岩瀬 そうですね。PDF内では検索もできるので、ストーリーへの入り口になると思います。そこは私も意識しました。ネット公開が書籍よりすぐれている点の一つは、この検索性にありますね。

「活字離れ」というウソ

坪田 さきほど、出版社の方が、無料で全文を公開することを悩まれたという話がありました。岩瀬さんは「ネットで全文を公開すると売り上げが落ちる」という説をどう思いますか。

岩瀬 「ネットで全文を公開すると」という前提は必要ないと思います。その理由はふたつあります。ひとつは先ほども申し上げましたとおり、すでに書店での立ち読みや図書館の利用などで、タダで書籍にアクセスする方法はあるという点です。

 もうひとつは、聞いた話ですが、カフェ併設の書店が出てきた頃は、その書店が売り上げを伸ばした。でも他の書店が同じようなことをすると、売り上げは減った。活字全体についても、同じことが言えると思います。R25というフリーペーパーが出てきたときにも言われましたが、起きている現象は活字離れではなく、ネットを含めた無料でアクセスできる活字の増加です。さらに増えていくのは時間の問題でしょう。

坪田 その通りだと思います。

 私も自著『2030年 メディアのかたち』(現代プレミアブック)で触れましたし、先日は日本記者クラブでもレクチャーをしましたが、総務省がまとめた『情報流通センサス』の報告書によると、1995年から2005年にかけて、発信される情報の数は410倍になっています。そして、消費量も13倍になっている。結果として、消費率は30分の1に減りました。消費する側は、太平洋のど真ん中でタモで情報を掬おうとしているわけです。

『生命保険のカラクリ』のページ

(以下、後編へ続く)