2011.11.30(Wed)

シリーズ 2020年の世界から見た2011年の日本2
~「食の砂漠」問題にいかに対応すべきか?~

筆者プロフィール&コラム概要
図1

文:西谷 朝子

「食の砂漠」問題が深刻化するアメリカ

 「フードデザート(食の砂漠)」という言葉を聞いたことはあるだろうか? 大国アメリカが4億ドルの国家予算を投じて対策をすすめている社会問題のことである。超大国として未だ世界第一のGDPを誇る米国だが、実は、低所得者地域において生鮮食料品店から1マイル(約1.6km)以上も離れた場所に住んでいる国民が2,350万人も存在すると発表されている *1。USDA(米・農務省)が公開しているデータを見ると、「食の砂漠」地域の広さに驚くばかりである(図1参照)。

 「食の砂漠」問題には、様々な要因が存在している。ひとつの要因は都市構造の変化に伴う、生鮮食料品店の空白地帯の発生である。さらに、人口動態や家族形態の変化、所得格差拡大等を背景として、社会の中で孤立する人の増加も要因となっている。

 生鮮食料品空白地帯の住民の中には、生鮮食料品にアクセスしやすい地域に転居した人も少なからず存在するが、高齢者や経済的に余裕がない住民はその地域に留まるしかない。そして、生鮮食品の購入が困難になった「食の砂漠」地域で生鮮食料品店の代わりに進出していったのがファーストフード店なのである。

「食の砂漠」化がもたらす肥満問題

 「食の砂漠」地域では偏った栄養状態によって肥満を抱える住民が増加している(図2参照)。糖尿病の発生率の増加が確認されているばかりでなく、最近では癌の羅漢率が増加する可能性も指摘されている。そのため、米国では「食の砂漠」地域の存在は、医療費負担増につながる問題として、官民で深刻に受け止められている。

 例えば、米国最大の小売チェーンであるウォルマートは、向こう5年間に300店の小規模生鮮食料品店を「食の砂漠」地域に出店する計画を2011年7月に発表している。もちろん企業としての成長戦略の一環でもあるが、オバマ大統領夫人のミシェル・オバマが掲げる「子供の肥満対策」に対応したアクションでもある。

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