年金運用独立行政法人こそ
事業仕分けすべきだ

長妻・ 原口「年金運用」論争の解決策

公的年金積立金の運用を巡って、鳩山政権内でちょっとしたバトルが起きている。

 長妻昭厚生労働相が国債での安全運用を主張する一方で、原口総務相は株や外債などへの積極運用を求めている。これについて、私は10年ほど前の話を思い出した。

 当時、私は、米プリンストン大学にいて日本経済などを教えていた。英語はあまり得意でないので、言語障壁の少ない数学や年金数理を使い年金などの講義をしていた。

 ある日、米政府の関係者から、日本の年金積立金運用の話を教えてくれという依頼があり、米国でも日本と同じ運用をしたらどうかと聞かれた。私の答えはノーであった。

 ここで、日本の現在の仕組みを確認しておこう。

 国民から年金保険料として日本年金機構(旧社会保険庁)が徴収、そのうち大半は年金給付に回り、残った一部は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)にいく。GPIFの年金積立金は120兆円に達している。

 GPIFはその資金を複数の民間金融機関に運用委託(丸投げ)している。ポイントは積立金を株などで市場運用しているということだ。当時の仕組みは現在とは表面的には異なっているが、積立金を市場運用していることは同じだ。

 他方、米国では、老齢・遺族・障害保険(OASDI)は200兆円程度の積立金を持っているが、すべて非市場性国債引受であり、市場運用はない。

 日本が公的年金積立金の市場運用を行っていたにも関わらず、私はノーと言ったのは、市場運用ほど国が行う事業に不適切なモノはないからだ。

 それなら民間金融機関に丸投げすればいいのではといわれたが、わざわざ国が国民から強制徴収し、それを国民に代わって財テクする理由がわからない。

 積極運用が好きな国民は、自分で財テクすればいいのだから。そんなことを言った記憶がある。

株式運用に反対したグリーンスパン

 そうこうしているうちに、当時のクリントン大統領が公的年金の株式運用をぶち上げた。

 ところが、当時のグリーンスパン連銀議長をはじめとして株式市場への介入など反対論が相次いだ。すぐさまクリントン大統領はあっさりと提案を撤回したのである。

 そのとき、グリーンスパンの言い分がきわめて興味深かった。私が主張したように政府の活動として不適切だという一般論に加えて、次のような論理を展開したのである。

「政府は健康のためにたばこ会社に対して厳しい措置をしなければいけないが、そのときに公的年金でタバコ会社株をもっていたらどうするのか」というきわめてわかりやすいものだった。

 公的年金の運用を気にしてタバコ会社への措置をためらったらまずいし、タバコ会社への措置の前に公的年金のタバコ株を売ったら、インサイダー違反になるのでさらにまずい。

 今、日本の政府に、こうした問題点はないのかと聞けば、情報の遮断はしっかりやっているとか、株を買うにもインデックス運用だから個別株の問題はないとか、答えるだろう。

 ところが、昨年の予算編成期に、厚労省がタバコ税の大幅アップを主張したとき、JT株価は15%くらい低下した。

 結局タバコ税はたいしたことはなかったので株価は戻ったが、もし大幅アップなら、JT株を持っていれば年金運用にもひびきかねない話だった。

 そもそも、長妻厚労相のいう安全運用も原口総務相のいう積極運用も、ともにGPIFの存在を前提としている。しかし、この前提そのものがおかしいのではないか。

 なぜ強制徴収したものを財テクするのか、財テクは国の事業にふさわしいのかどうか、GPIFがないと本当に困るのか、是非とも事業仕分けの対象にすべきだろう。独立行政法人の廃止は民主党の公約だろう。

 市場運用というのはリスクが不可避なので当然責任が伴う。ところが、公的組織は責任をとるのが苦手だし、責任をとってもらっても意味がない。だから市場運用は民間が行うべき分野というのが常識だ。

 そういうと、海外の公的年金でも市場運用しているところがあると反論してくるだろう。そういう人たちの出す例は、カルパースとかノルウェーGだ。彼らは公的という話をするときに、相手が「政府」であればなんでも「公的」という。

 しかしカルパースは、米カリフォルニア州の公務員年金であり、住民が加入している年金ではない。またノルウェーは石油収入を将来の年金財源にしようというもので、国民から強制徴収したお金を財テクするのとは違う。

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