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インサイド・レポートあなたの会社が危ない!
パナソニック、トヨタほか深くて長い苦悩の始まり

トップ企業が次々「赤字転落」「業績不振」
決算発表をするパナソニックの大坪文雄社長〔PHOTO〕gettyimages

 何かが変わった。この不調は円高のせいだけじゃない、これからずっと続くのかもしれない

 確かに大震災はあった。円高の影響も大きいだろう。でも、日本企業がダメなのはそれだけが理由なのか。その危機感が一流企業から伝わってこないことが、実は一番大きな問題なのかもしれない。

ジャーナリスト 井上久男

決算発表での異様な光景

 10月末から11月にかけて発表された日本の名だたる大企業の業績は、3・11の東日本大震災や、ギリシャ・ショックに端を発した1ドル70円台という超円高の影響を受け、大幅な赤字や大不振に陥った。メディアでは「'08年秋のリーマン・ショック以来」という言葉が躍る。では、これらの外的要因がなくなれば、この苦境は一時的なものとして、ふたたび日本企業は立ち上がることができるのだろうか。それとも、もっと根本的なところに日本企業共通の病巣があり、これまではリストラなどで覆い隠してきたものが、震災や円高によって一気に吹き出しただけなのか。

 10月31日午後、大阪ビジネスパーク(OBP)にある「パナソニックタワー」では、パナソニック2011年度連結中間決算(4月~9月)に関する記者発表が行われた。毎年恒例の発表だが、今年は会場内に異様な雰囲気が漂っていた。

 原因は記者席の最前列に並んだ、いかつい坊主頭の男性6人。彼らは全員、日本経済新聞大阪経済部の記者である。基本的に企業寄りの記事が目立つ日経新聞において、彼らは「大阪電機軍団」とも呼ばれ、批判的な記事を書くことで企業から恐れられる存在だった。

 会見の質疑応答では、この坊主頭の記者たちが一斉に質問の手を挙げるが、パナソニック側は徹底無視。彼らに質問の機会は与えられなかった。

 その理由について、ある電機メーカー幹部がこう明かす。

「決算発表直前の10月31日午前7時にアップされた日経電子版の『コンフィデンシャル』というコラム記事が原因のようです。記事では、パナソニックの経営トップである中村邦夫会長らの経営手腕や企業風土にまで踏み込んで同社を批判しています。その記事に怒った同社が日経記者を無視したというのは、在阪メディアの間で有名な話になっています」

 この会見では、従来300億円の当期黒字と予測していた'12年3月期連結決算を、4200億円の赤字に大幅下方修正。赤字額はパナソニックの経営史上でも過去2番目に大きく、'00年に社長に就任した中村現会長による大規模リストラの影響で、4310億円の赤字を出した('02年3月期)のに次ぐ。

 同社は赤字の原因を、薄型テレビやDVDなどが主力の「デジタルAVCネットワークス部門」の不振と円高の影響によるものとしたが、先の日経コラムではもっと根本的な原因が指摘されている。

〈トップの判断に意見を挟めない企業風土になってしまった。一度決めた判断を決して間違いではなかったように見せかけることに必死になっている〉

 そして、コラムの結びはこう締めくくっている。

〈日本の製造業をけん引してきたパナソニックは今、社内にも社外にも現状と今後を正直に語るべき時期に来ているはずだ〉

 ただし、このコラムはその後更新され、なぜかこうした表現の一部は削除されている。パナソニックに限らず、日本企業は外部からの批判を極端に嫌う。現トップが経営判断を誤ったことを社内外で認めて、小手先ではない徹底した構造改革をする姿勢が欠如している。日経コラムの指摘は正論だろう。

 たとえば、テレビ事業が不振なのは、後で触れるソニーも同様である。原因は値崩れや、韓国のサムスン電子、LGとの競争に負けているからに他ならない。もはや日本製というだけで、多少値段が高くても売れる時代ではない。価格競争力だけでなく、商品そのものの質でも、日本製のアドバンテージはなくなる一方だ。

 この構図は、なにも最近始まったわけでなく、日立製作所はテレビの国内生産からの撤退を決め、シャープもテレビ用大型液晶からスマートフォン向けの中小型液晶の生産に切り替えを促進させている。業界のなかでもパナソニックの対応は鈍かった。

 在阪の財界担当記者は、その理由について、「不振のAVCネットワークスは、中村会長や大坪(文雄)社長の出身母体であり、歴代トップを輩出してきた本流中の本流の部門だけに、しがらみも多く、メスを入れるのが遅れた」と語る。日本的な「しがらみ」を理由に、トップの出身母体だからと不採算部門を漫然と放置しているようでは展望はない。

 こうしたパナソニックの動きに、市場は敏感だ。11月17日現在の株価は692円と格下のシャープ(725円)、三菱電機(706円)にも負けている。なお、これは30年前の同社の株価と同じ水準だ。

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