アメリカの政治ショーにされた豊田社長「公聴会」
政府も企業も危機対応の見直しを

 トヨタ自動車の豊田章男社長がワシントンで24日(日本時間は25日)、下院の監視・政府改革委員会が開いた公聴会で約3時間20分にわたって証言した。同委員会のタウンズ委員長も「今日は感銘を受けた。あなたが献身的に自動車の安全に取り組みたい気持ちが現れている」などと発言し、一定の評価を得た。

 トヨタトップの直接の説明により、米国では中間選挙を控えての「政治ショー」化していた大規模リコール問題は、ある程度沈静化の方向に向かうだろう。集団訴訟の動きもあるので、まだ油断はできないが、ひとつの区切りがついたのではないか。

 今回の「政治ショー」では、日本のメディアも米国での報道に振り回された感がある。トヨタ自身も振り回された。そして、日本政府はグローバル企業への「援護射撃」に関して無策であることも露呈した。

なぜ『逃げている』と報じられたのか

 その経緯を振り返る。朝日新聞名古屋版が2月12日付朝刊の一面記事で、「豊田社長、公聴会出席へ」と特ダネを書いた。関係筋によると、朝日の報道はトヨタ中枢から得た情報だったという。しかし、他のマスコミは追いかけ報道をしなかった。筆者の取材でも豊田社長は公聴会への出席意欲は満々だった。

 ところが、17日に開いた記者会見で豊田社長はなぜか、公聴会への出席に消極的な発言をし、それを内外のメディアは「公聴会欠席」と報じた。特に海外メディアは「トップが説明責任を果たしていない」という視点で批判した。

 そして19日、豊田社長は名古屋の「番記者」を集め、一転して公聴会出席を表明。豊田社長の対応がころころと変わった理由は、まだ公聴会から正式な召喚状も来ていない時点で朝日新聞が出席報道をしたことに対し、米国からトヨタ側にクレームがついたからだ。だから豊田社長は、17日の記者会見で消極的な発言をしたのだ。

 しかし、ここにトヨタの広報戦略のまずさがある。米国の政治や経済に詳しい専門家は「『私はどこに出て行っても説明する用意がある。召喚状が来たら喜んで説明に行く』とさえ説明していれば、海外メディアも『逃げている』とは報じなかっただろう」と見る。

 確かに逃げも隠れもしませんと言えばよかっただけの話なのに、豊田社長は出席を見合わせる主旨の発言をしてしまった。トヨタのトップの発言が世界にどのように伝わるか、豊田社長に的確なアドバイスができていなかった。要はメディアトレーニングができていなかったのだ。もちろん豊田社長も、自身の発言の重さを理解できていなかった面もある。

 トヨタの広報や渉外は豊富な資金力を背景に大きな力をもっていたはずなのに、今回の局面では必ずしもうまく機能しなかった。広報については、今述べた通りである。

 政治や行政と向き合う渉外も機能しなかった。米国では経済が回復せず、アフガン問題などオバマ大統領の政策もうまくいっていない。その局面で、公的資金を投入したGM(ゼネラル・モーターズ)が復活しなければ、矛先はトヨタに向いてくることは分かっていたはずだ。あるキャリア官僚も、米国車がエコカー減税の対象になっていないことを米国がクレームをつけ始めた頃から、「日米自動車摩擦のような何か変な雰囲気を感じ取っていた」という。

 元々米国は、ペリー来航の時から、軍事力を背景に「いちゃもん」をつけてくる国である。話は少し変わるが、日本が太平洋戦争に敗れて、ミズーリー号の上で降伏文書の調印式で飾った星条旗は、ペリーの旗艦であったサスケハナ号で使っていたものだとされる。

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