復興よりも先に進む、東電、銀行、財務省を保護する「福島原発賠償策」の異常 1世帯当たり1万7000円の値上げに直結

2011年04月26日(火) 町田 徹
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 これらの過去の遺産の中から、直ちに4兆円前後を拠出して賠償に充てても、東電が債務超過に陥ることはない。もちろん、電力の安定供給も維持できるはずだ。

 4兆円と言えば、それだけで、少なくとも8年前後は本稿が指摘した値上げを不要にする資金だ。なぜ、これをまず、賠償にあてないのだろうか。

 過去の遺産のうち、使用済燃料再処理等引当金は、国債で運用されているはずだ。わけのわからない交付国債などというものを持ち出さなくても、この引当金の転用ならば、換金は非常に容易である。

資産を売却しても電力の安定性にはなんの問題もない

 資金の効率運用の観点から、その他の内部留保がこれまで、全額がキャッシュで保持されてきたとは思えない。

 が、東電のように豊富な収益の確保を約束されてきた企業が、その大半を懐に貯め込んだまま、新たに賠償のための支援を政府から受け、そのツケを国民に回すというのは、常軌を逸した行為だ。

 まず、過去の蓄積で自己責任を果たすべきである。もし、その拠出を妨げるような官僚や政治家がいれば、それは国民共通の敵である。

 今回の取材の過程では、地域独占や発送電の一体経営の見直しを行うためには、「疑似国有化や国有化を行って会社を解体しないと、運転中の発電所の売却は困難だ」というわけのわからない主張もよく聞いた。が、これが説得力のある議論とは考えられない。

 というのは、慎重に電力事業経験のある企業を選んで売却すれば、ある日を境に所有者が変わるという資産売却も何の問題もなく実施できるはずだからである。関係者の中から、そういう可能性を是認する証言を得た。

 地域独占や発送電の一体経営の見直しはやや専門的な議論だ。今なお根強い要求があり、その哲学が間違っているとは思わない。

 しかし、今回、関西電力や中部電力まで念頭に置いて、直ちに電力行政の転換を強いるのは、いたずらに話を複雑にして混乱を招くだけではないだろうか。

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