復興よりも先に進む、東電、銀行、財務省を保護する「福島原発賠償策」の異常 1世帯当たり1万7000円の値上げに直結

2011年04月26日(火) 町田 徹
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 そこで、政府の計画に話を戻そう。赤字を回避して、政府の賠償スキームを維持するために必要な利益を確保しようとすれば、大幅な電力料金の引き上げが避けられないという現実が浮かび上がってくる。

 ちなみに、東電には3000万弱の契約者がいる。これには大規模な製造工場から、我々のような庶民の家庭まで含まれるが、単純に値上げを均等に負担すると仮定すれば、1世帯当たり1万6700円程度の値上げが必要になる計算なのである。

 新聞はニュースソースに配慮してあえて触れないのだろうが、政府案を狙い通りに機能させるためには、この程度の値上げは避けて通れない。しかも、一端上がった電力料金は、少なくとも10~15年以上引き下げが見込めない可能性が高いのである。

本来は8年間、値上げは不要のはずだが

 値上げがこれほど高額になるには、もうひとつ理由がある。賠償資金を、これから東電が稼ぐ収益の中から賄おうとしていることが元凶なのだ。

 東電に限らず、電力会社は「安定供給」の美名のもと、一般企業のような市場競争を免除され、地域独占体制の中で発電と送電を一貫体制で行う発送電の兼営を行い、これまで膨大な収益をあげてきた。原子力の安全神話の構築に多額のコストをかけても、有り余る収益を確保でき、膨大な内部蓄積を積み上げることができたのだ。

 東電で言えば、会社を丸ごと売却する際のひとつの目安になる総資産が2010年3月末で13兆2000億円に達する。

 このうちの純資産(株主資本)は、2兆5200億円だ。その中には、株主総会の承認を得れば取り崩せる資本剰余金(6800億円)や利益剰余金(1兆8300億円)といった内部留保が含まれる。

 原子力事業のために巨額の積み立てをしていることも見逃せない。六ヶ所村などの使用済みの核燃料の再処理施設の建設資金や、寿命を迎えた原発の解体に備える狙いがあったからで、その残高は、使用済燃料再処理等引当金が1兆2100億円、使用済燃料再処理等準備引当金が360億円、原子力発電施設解体引当金が5100億円となっている。

 これらは、経済産業大臣の許可さえ受ければ、賠償に転用が可能なストックだ。福島原発事故を起こし、従来のような原発の積極展開が難しくなる中で、こうしたストックを温存しておく必要があるだろうか。

次ページ  これらの過去の遺産の中から、…
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