復興よりも先に進む、東電、銀行、財務省を保護する「福島原発賠償策」の異常 1世帯当たり1万7000円の値上げに直結

2011年04月26日(火) 町田 徹
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 残念ながら、答えは否である。というのは、この仕組みは、前提に明らかな無理があるからだ。

 その詳細を明かす前に、各紙の報道を紹介しておこう。

 「一時的に東電の支払い能力を超えることが考えられる。この場合、東電は、機構あての優先株や借入金で調達資金を支払いに充て、その後、毎年の利益から配当金や借入金の返済の形で、機構に返済し続ける。東電の返済については毎年1000億円、10~15年とする案を軸に検討している」(4月20日付 読売新聞朝刊)


 「東電の年間利益は1000億円程度で補償負担が東電の支払い能力を超えると電力供給に支障が出かねない。このため、年間の負担額については収益も勘案して一定の上限を設ける」(4月20日付 日本経済新聞夕刊)

 「東電は、利益から設備投資資金などを除いた余裕分を機構に返済していく。機構はこの返済分を国庫に返納するので、すべて国に返済されると最終的な財政負担は発生しない仕組みだ」(4月21日付 朝日新聞朝刊)

 といった具合だ。要するに、今回の計画は、東電が毎年1000億円程度の最終利益を確保できることを前提にしている、と報じているのだ。従って、本当に、東電がこの利益を確保できるのか、という点が焦点になる。

何もしなければ3000億円も赤字に

 東電の収益の推移をみてみよう。なるほど確かに2009年度は、本業で2844億円の営業利益を稼ぎ出し、税引き後の最終利益でも1337億円を確保した。

 ところが、その前の2年間は惨憺たるものだ。2007年度に1501億円の最終赤字、2008年度に845億円の最終赤字といった具合なのだ。原因は、2007年7月16日に起きた新潟中越沖地震にある。柏崎刈羽原子力発電所が運転休止に追い込まれ、原発よりもコストの高い火力発電所をフル操業するための石油とガスの燃料購入代金が膨らみ赤字に転落してしまった。

 勘の良い読者なら、もうわかったはずである。

 燃料コストの膨張は、今回も避けて通れない。東日本大震災によって、福島の2つの原発が事故を起こして、当分の間、運転再開が見込めないからだ。

 ある電力会社関係者を取材すると、そのコストが驚くほど巨大だという事実が浮かび上がってきた。

 新潟中越沖地震後の休止が続いている柏崎刈羽原発の2、3、4号機の運転を再開できないところに、今回の福島原発の事故処理が加わり、これを火力発電に置き換えるとなると、営業費用が2009年度に比べて5000億円程度も膨らむというのだ。つまり、何もしなければ、東電は3000億円程度の最終赤字に陥ってしまうのだ。

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