復興よりも先に進む、東電、銀行、財務省を保護する「福島原発賠償策」の異常 1世帯当たり1万7000円の値上げに直結

2011年04月26日(火) 町田 徹
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 報道に共通しているのが、東電の資金繰りを万全にするため、政府支援の道筋を付ける「新機構」を設置し、国がこの機構に、いつでも現金に換金できる「交付国債」を付与して、東電への機動的な資金供給が可能な体制を整備するという点だ。

 だが、この計画に盛り込まれた「機構」とか「交付国債」といった単語は日頃馴染みのないものだ。わざと難解にしたのではないか、と勘繰りたくなるほどだ。

 しかも、一連の報道は、絵に描いたようにスクープ報道の弊害が露わだった。報道が我がニュースソースに媚びる競争に陥り、肝心の政府案の問題点の指摘が手控えられる傾向が強かったのだ。

発送電の一体経営を政府が保証

 そこで、まず検証しなければならないのが、この計画は、誰にとって都合がよいものなのかという点である。

 現行の「原子力損害の賠償に関する法律」(原子力損害賠償法)は、過失の有無に関係なく、原発事故が原因で発生した損害の賠償を、電力会社に課している。その範囲に、上限を設けておらず、無限責任となっていることも大きな特色だ。

 半面、同法は、政府の支援に制限的だ。賠償額が、原子力事業の認可条件として加入を義務付けている保険のカバー範囲(1件に付き1200億円、ちなみに、福島は原発が2個所あるので2400億円)を超えて、かつ必要が生じたときに限定しているからだ。しかも、「国会の議決」を条件として、2重に釘を刺している。

 ところが、東電はこうした法の精神に反して、自らがどのような形で、いくら調達して、賠償にあたるのか何ら示していない。勝俣恒久会長は17日の記者会見で、「国のスキームがしっかりしていない場合、見通しが立たない。補償の話は、国のスキームを早く決めてから」と述べただけである。

 そうした中で出てきたのが、今回の政府案だ。先週末までの報道に共通するのは、政府が官民共同で設置する「新機構」に換金が容易な「交付国債」を貸し付けることと、新機構が必要に応じて東電への援助を行うことの2点ぐらいだ。肝心の東電が自前のカネをいくら投入して賠償にあたるのか、そのためにどういう財源を使うのか、といった点は、ここでも明らかにならなかった。

 つまり、東電は、何もしないで、政府の手厚い支援を勝ち取った。東電という会社の存続を保証されただけでなく、これまで通り1都8県の地域独占会社として、発送電の一体経営を続けて行くことも容認されたのだ。

次ページ  こう見てくれば、明らかだろう…
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