『日本経済の奇妙な常識』が話題のエコノミスト吉本佳生氏が特別寄稿「FXのデイトレーダーから長期投資まで、外貨投資のリスクはこうやってを抑えよ!」

2011年の円高は激しかったといえるのか?

 2011年に入り、3月、8月、10月と、対米ドル円相場の戦後最高値更新が話題になった。1995年春からずっと更新されなかったのに、何度も最高値を更新したのだから、2011年はさぞかし円高が激しかったのだろうと思うかもしれない。対米ドルだけでなく、韓国企業との競争の関係で、対ウォンでの円高もよく取り上げられていた。夏以降は、ヨーロッパの財政危機によるユーロ下落も注目された。

 そこで、いくつかの通貨に対する円相場の推移を、2011年初め(2011年1月3日)を100として、1980年から2010年までは月次データで、注目すべき2011年(11月上旬まで)は日次データでながめてみよう。

 たしかに、対米ドルと対ウォンでは高値を更新しているが、他の通貨に対してはそうではない。しかも、あれほど騒がれた対米ドル円相場も、年初からみて最大で7%程度の上昇にとどまっている。過去の変動に比べれば、2011年(11月上旬まで)は相当に円相場が安定していた年といえる。

 多くのマスメディアは、データをほとんど調べずに大騒ぎしていたことがよくわかる。円相場(為替レート)のデータは簡単に入手できるのだから、外貨投資をおこなう人は自分でデータを調べるべきだ。それほど、日本の新聞やテレビの経済報道は当てにならない。

短期トレードの場合:週末には、FX取引のポジションを閉じるべきか?

 さて、対米ドル円相場でみた円高が進むと、個人の外貨投資が増える。短期トレードでも長期投資でも、「円高が一時的に進んで、米ドルが安く買えるタイミングで買う」という考え方は理にかなっている。また、いずれ日本経済が破綻するとの不安を抱く人も、外貨をもつことでリスクを減らそうとしている。日本の円の将来が信じられないなら、通貨を分散した資産運用は自然な選択といえる。

 しかし、過去には円高傾向で推移してきたため、これまでの外貨投資で損をした人も多い。問題は、結果として損をしたことではない。たいていの個人が、外貨投資のリスクの基本性質について考えていないことにある。円安になれば儲かり、円高になれば損をするという論理は、もちろんわかっているはず。

 でも、「投資期間が変わると、為替リスクがどう変化するのか?」は知らない。また、投資対象を外貨建て債券(例えば米国債)にしたときに、「為替リスクと債券価格の変動リスクの間にどんな相関があるのか?」も知らない。だから、効率的にリスクを負う外貨投資になっていない、という人がいる(かなり多いのではないかと想像する)。

 たとえば、デイトレードを中心に行い、長くてもせいぜい数日から数週間単位で売買を繰り返す「短期トレーダー」は、週末にポジションを閉じるべきだろうか。具体的なリスク計算を行うと、じつは明確な結論が出る。2001年から直近の2011年10月までのデータを中心に、順を追って説明しよう。

 リスク計算の基本となるデータは「ボラティリティ」と呼ばれる。短期トレードの常連なら、この言葉を見聞きしたことがある人は多いだろう。しかし、具体的に計算するとなると、自分でやるのは大変だ。ボラティリティは、円相場や株価などの変化率の標準偏差である。ちょっとややこしいのは、「変化率をどの期間でみるか?」であり、1日単位の変化率をみるのが普通である。とはいえ、ときには1ヵ月単位や1年単位の変化率から計算する方がいいこともある。また、年率に換算して表示するのが一般的である。