ダーウィンに海兵隊駐留ーーアジア太平洋地域の安全保障を最優先するオバマ大統領の「対中国シフト」で野田政権に見えてきた
「普天間」問題解決の可能性

〔PHOTO〕gettyimages

 バラク・オバマ米大統領が11月17日にオーストラリアの首都キャンベラの同国議会で行った演説は極めて注目に値するものだった。

「新アジア太平洋安全保障政策」と名付けられるべき重要演説であり、その中でオバマ氏はイラクとアフガニスタンからの米軍撤退を踏まえ、今後の安保政策でアジア太平洋地域を「最優先」に位置づけると宣言し、同地域の秩序作りを米国が主導する決意を表明したのだ。

 改めて指摘するまでもなく、オバマ氏は先のアジア太平洋経済協力会議(APEC)ハワイ首脳会合で米国が主導して環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉を推進することを表明したが、経済・貿易に続いて外交・安保も軸足をアジア太平洋に移すことを高らかに宣言したことになる。

 オバマ大統領は豪議会演説の前日のギラード首相との会談でオーストラリア北部のダーウィンにある空軍基地に新たに米海兵隊を駐留させることで合意した。同地はインドネシアからわずか820キロにあり、米海兵隊の常駐と米豪空軍の一体運用によって南シナ海(マラッカ海峡)とインド洋での米太平洋軍の存在感を強めることによる、空母建造など中国海軍の戦力増強と対艦弾道ミサイル(ASBM)配備を牽制するための「中国シフト」の一環である。

 換言するならば、米海兵隊の豪州駐留によって、これまで在韓米軍や在日米軍(在沖縄海兵隊を含む)が展開する米太平洋軍の北東アジアへの偏重を、南シナ海とインド洋の中間に拠点を確保し修正するということだ。

 こうした「中国シフト」について米国防総省(ペンタゴン)は、在日米軍の再編問題に影響を与えるものではないと言明するが、アジア太平洋地域における米軍の配置が抜本的に見直される可能性が高い。

浮上する宮崎・新田原、長崎・佐世保への移転

 そこで注目されるのは、普天間移設問題との関係である。米海兵隊が駐屯する在日米軍・普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、日米政府は2010年5月に同県名護市辺野古に代替施設を建設することで合意しているが、県を挙げての反対運動によって実現のメドが付いていない。

 米第5海兵団約1万7000人(ごく一部は岩国に駐留)のうち司令部要員を中心に8000人のグアム移転は06年に日米合意をみているが、最終的に駐豪海兵隊の規模を2500人とする今回の米豪合意よって、沖縄駐留海兵隊の中から司令部要員だけでなく歩兵、航空、後方支援部隊の要員もグアムに移転が可能となる。

 問題は、米海兵隊の戦闘部隊である第3海兵師団航空部隊をどうするのかである。辺野古に攻撃ヘリ用の滑走路を建設できないとなれば、滑走路・施設を有する既存の基地を使うしかない。沖縄の米空軍嘉手納基地との統合案も一時期取り沙汰されたが、空軍サイドが強く反発しており現実味に欠ける。

 そこで浮上してきたのが、宮崎県の航空自衛隊の新田原基地と海上自衛隊の佐世保基地に分散移転するという案である。さらに米海兵隊の訓練場として鹿児島県の馬毛島と沖縄県の下地島の名前も挙がっている。

 もちろん現時点では、駐豪米海兵隊の部隊がどこの基地から充当されるのかは明確になっていない。だが、沖縄からの8000人のグアム移転を前提とすると、残りの約9000人相当程度を九州の両自衛隊基地に分散移転させ、同時に何個大隊かの要員をオーストラリアに移転すれば、たとえ当分間であれ人口密集地にある普天間飛行場の現在の「危険」を除去することができる。

 となれば、同飛行場の現状維持にもならず、かつ「バジェット・カッター」の異名を取るレオン・パネッタ国防長官が進める国防予算の大幅削減計画の中で、この分散移転案は、日本側にとって巨額な予算を投じての辺野古移設を強行しないで済むうえに米側にとっても新基地をオーストラリアに建設する必要がなくなるので許容できるものだ。

 そしてこの分散移転が実現すれば、国内政治の観点からしても、野田佳彦首相は歴代政権が解決できなかった「普天間」をクリアできることになるのだ。オバマ大統領の「アジア太平洋最優先」路線に上手に乗って難題の政治課題をクリアする。これこそ野田政権がいま最優先で取り組むべきことではないか。

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