雑誌
初公開!福島第一「原子炉の底」衝撃の現状
2号機で「臨界騒動」が起きる一方、
メルトダウンの危機を抱えた4号機は
手つかずのまま

圧力容器を支える「ペデスタル」の内部写真。天井上部に見えるビンの蓋のようなものがスタブチューブフランジ。下に長く伸びる管がドレンパイプで、それぞれ制御棒を押し上げる役目、圧力容器内の水を抜く役目を担う

 天井からぶら下がった無数のパイプ。物言わぬ鉄の管は、地下深い鍾乳洞を連想させる不気味さだ(上写真)。次ページの写真には、ちぎれたシートが散乱し、廃墟のような状態が写し出されている。これらの写真は、いずれも東京電力福島第一原子力発電所・4号機の内部で10月に撮影されたスクープ写真だ。

 本誌(11月4日号)は10月、天井が吹き飛び、核燃料体が入った燃料プールなどが手つかずのまま放置された4号機の建屋内写真を掲載した。今回公開するのは、4号機の原子炉格納容器内で、「圧力容器」を支えているコンクリート製の構造物「ペデスタル」内の惨状だ(3ページの図参照)。撮影者が証言する。

「4号機内の瓦礫撤去が進み、ようやく10月になってペデスタルの中に入ることができました。ペデスタルの入り口は高さ1mほどで、屈まないと入れません。中は真っ暗で、ヘッドライトだけが頼りです。広さは直径7mほどの円形の空間で、シーンと静まり返った場所です」

 無数のパイプを撮影した場所は、原子炉圧力容器の真下、いわば〝原子炉の底〟にあたる。天井からぶら下がるパイプ類は何なのか。元東芝・原子炉格納容器設計者である後藤政志氏が説明する。

「写真の上部に見えるもの(ビール瓶の蓋のようなもの)はスタブチューブフランジで、圧力容器内の制御棒駆動機構につながっています。このスタブチューブフランジに、配管やホースをつないで水圧をかけると、上にある制御棒が上昇し、燃料体に挿入され、原子炉の出力を抑制する仕組みになっています。一方、(写真で)下に長く伸びているたくさんの管は、ドレンパイプと呼ばれ、圧力容器の中の水を抜くためのパイプです」

(右)ペデスタルの内部に入るための出入り口は高さ1m強、長さ1mほどのトンネルだ。身体を屈めて進む (左)格納容器の内部に入るための出入り口(パーソナルエアロック)。水素爆発時、4号機は定期点検中であり、二重扉が両方とも開いたままだった

 ペデスタル内の放射線量は、撮影当時は毎時1ミリシーベルトだったという。年間の被曝限度量を、1時間で超えるほどの高線量である。

 これらのパイプ群を含む原子炉圧力容器の下部は、1~3号機も4号機とほぼ同じ構造である。メルトダウンを起こした1~3号機とも、核燃料が圧力容器を溶かして、これらのパイプを伝って下へ滴り落ちたと考えられる。パイプの下には、作業用の薄い踏み板(サービスプラットフォーム)が張られているが、燃料はここも通過して、2mほど下のペデスタルの底へ到達したと推測される。

予期せぬ〝臨界騒動〟

 11月2日、東電は突如、そんな惨状が推測される1~3号機のうち2号機で、「再臨界」が起こっている可能性があると発表した。2号機内で放射性キセノンが検出されたのである。キセノンは半減期が短いため、ここ最近のうちに核分裂が起きて放出されたとしか考えられず、再臨界が起きた可能性があるとしたのだ。

 そもそも臨界とは何か。東京工業大学原子炉工学研究所・鈴木達也准教授はこう説明する。

「原子力発電は『臨界』を起こすことで発電をします。放射性物質であるウラン235に中性子をぶつけることで、ウランの核分裂を起こし、このとき発生する熱エネルギーを利用して発電するのです。核分裂を起こすと、キセノンやセシウム、ストロンチウムなどの核分裂生成物と中性子を放出します。この中性子がまたウランに衝突して核分裂を繰り返す。このように核分裂が連鎖的かつ持続的に起きることを臨界と言います。原発が通常運転している際には、制御棒や炉内の水の状態をコントロールすることで、バランスを保っているのです」

 臨界をコントロールする制御棒の作動もできず、かつ、格納容器に穴が開いた状態と言われる2号機で、放射性物質を発生させる臨界が再び起きたとなれば大問題である。しかも、東電の武藤栄副社長は今年3月末に、「再臨界が起きる可能性はまったく考えていない」と断言さえしていたのだ。

 しかし、東電は翌3日、「臨界ではなく自発核分裂だった」と前言を翻した。検出されたキセノンは、原子核自体が自然に核分裂をする「自発核分裂」という現象で発生したもので、心配する必要はないと説明したのだ。

 東電はその根拠として、核分裂の連鎖を抑えるホウ酸水を注入しても、変わらない量のキセノンが検出されたことなどを挙げた。鈴木氏も東電の説明は妥当だとし、こう続ける。

「ホウ酸水のように中性子を吸収するものを入れると、中性子の量が変動するはずです。変動しないということは、連鎖反応を起こしていない、つまり臨界ではない可能性が高い。自発核分裂は、外部からの影響にかかわらず、一定量起こるものだからです」

 しかし、一連の東電の対応には呆れるばかりだ。前出・後藤氏が批判する。

「今回の再臨界の疑いが出たきっかけは、10月末に格納容器内の放射性物質を測定し除去するシステムが運転を開始して、キセノンが検出されたからです。そうであるなら、なぜ3月の時点で東電は臨界の可能性を全面否定できたのか。いい加減に答えていたとしか思えません」

 放置されたままの4号機の燃料プールには、いまだ1331体の燃料体が保管され、余震などによるメルトダウンの危機に晒されている。また、1~3号機の炉内には溶融した燃料体があり、今後、再臨界を起こす可能性がゼロとは言い切れない状態にある。

〝収束〟に向けて、まだまだ予断は許されないのだ。

「フライデー」2011年11月25日号より

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