経済の死角

特別読み物
被災地で捕まった人たち
「震災後」裁判傍聴記

2011年11月24日(木) 週刊現代 
週刊現代
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こんな光景を前に、どうして悪事を企てるのか・・・・・・〔PHOTO〕gettyimages

 被災者が被災者を襲う国---。海外メディアは日本人の礼儀正しさを賞賛したが、いま全国の法廷で、震災に便乗した犯罪の裁判が行われている。法廷で語られた「犯罪」から見えてきたのは---。

取材・文/司法ジャーナリスト 長嶺超輝

余裕で盗めるんじゃないスか

 大震災の発生から間もない3月下旬の夜。20~25歳の若い男6人組が部屋に集まっていた。ゲームやDVDなどを楽しんだりしてグダグダ過ごしているうち、そのうちの1人が「被災地で盗みをしているやつがいるらしい。余裕で盗めるんじゃないスか」「行くんなら行かないスか」と言い出した。

 深夜3時。明かりが全く無い仙台市若林区の沿岸部に到着した6人は、懐中電灯を手に持ち、津波に遭っても辛うじて建っている2階建ての住宅に侵入。現金1万2000円のほか、液晶テレビ、スノーボード、『ワンピース』『スラムダンク』といった人気漫画など、中古品として転売しやすいものを狙って計約7万円相当の品々を盗んだのである。

 1階は完全に海水をかぶって使えなくなっており、住人たちはやむを得ず避難所生活を送っていた。残った家財道具をなんとか守りきろうと、主は週に何度か自宅へ戻り、扉や窓ガラスを喪失した壁の隙間に、ベニヤ板を釘で打ちつけて補強していた。

 被告人らはそのベニヤを引き剥がし、土足で踏みこんだのである。本件の被害者はわずか3週間足らずの間に、二重の苦しみを味わわされたことになる。

 犯人らの乗っていたクルマは、途中で警戒中のパトカーとすれ違っており、証拠隠滅のため、盗んだ品物のほとんどを車窓から投げ捨てた。まるでテレビゲーム感覚の犯行。

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