牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」
2011年11月17日(木) 牧野 洋

TPP交渉、アメリカの新聞で話題にならず、日本の新聞だけ読んでいると「日本中心に世界が回っている」と錯覚?

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 今月12、13の両日にホノルルで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議。会議に先立ち、日本の主要紙は連日のように1面ニュースとして環太平洋経済連携協定(TPP)を取り上げていた。

 日本はTPP交渉に参加すべきかどうかで、国を二分する議論になっていたからだ。参加賛成派が「日本は貿易立国なのだから参加は当然」と言えば、反対派は「日本の農業が破壊されてもいいのか」と息巻いていた。インターネットを中心に「アメリカの陰謀」といった見方まで広がっていた。

 APEC開催直前の11日までの1ヵ月間で、主要紙はどの程度TPP報道に力を入れていたのだろうか。記事検索システム「日経テレコン」を使い、読売、朝日、毎日、日本経済の各紙を対象に「TPP」というキーワードで検索してみた。

 読売379本、朝日349本、毎日356本、日経240本---。1ヵ月の間に4紙合計で1324本、1紙当たり平均で331本の記事がヒットした。1紙当たり1日平均で11本もの関連記事が掲載されていた計算になる。「TPP」という言葉が1回でも出てくる記事をすべて網羅しているとはいえ、ざっと見出しをチェックした限りでは大半は「TPP関連」と見なしていい。

 各紙とも横並びでTPP一色の紙面作りをしていたといえよう。記者クラブ経由で同じ情報源を使うことが多いから、新聞報道全体が一方向に過熱しやすい。日本の新聞だけ読んでいたら、ホノルルではTPPが主要議題として扱われ、日本がキープレーヤーとして注目を集めるという印象を読者が抱いたとしてもおかしくない。

 アメリカの主要紙を点検すると、まったく違う景色が浮かび上がる。記事検索システム「レクシスネクシス」を使い、国際報道で定評のある高級紙ニューヨーク・タイムズを点検してみた。期間は同じ1ヵ月間。キーワードとしてはTPPの正式名称「Trans-Pacific Partnership」を使った。

 結果は? 文字通りゼロである。キーワードを略称の「TPP」にしたり、別称の「Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement」にしたりしても、やはりゼロだ。

 TPPにこだわらなければアメリカでは日本関連ニュースはむしろ多かった。損失隠し問題で揺れるオリンパスが大きな注目を集め、連邦捜査局(FBI)まで動き出していたからだ。

 「オリンパス」と「ウッドフォード(解任されたイギリス人社長マイケル・ウッドフォード氏のこと)」をキーワードにして記事検索すると、同じ1ヵ月間で同紙は21本のオリンパス関連記事を掲載している。2日に1本以上のペースでオリンパス疑惑を報じていた計算になる。

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