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わずか半年で1兆円集まった 超金利
預金者が殺到する「大和ネクスト銀行」は大丈夫か

預金を手元に親会社で株式や投信と買ってもらうのが、銀行設立の目的だった。(大和ネクスト銀行HPより)

 非常事態に備え、とりあえず投資信託は解約した。株式投資も控えている。かといって、手持ちの余裕資金を遊ばせておくのはもったいない。安全・確実に蓄えを増やす方法はないのか---。そんな投資家からの注目を、一身に集めている銀行がある。大和証券グループ本社傘下のネットバンク「大和ネクスト銀行」だ。

 今年5月にサービスを開始した同行のスピード成長ぶりが、すさまじい。6月末時点で13万9000件しかなかった口座数は順調に増え続け、いまや35万件にまで膨れ上がっている。

 さらに、ネットバンクの最大手・ソニー銀行が開業から6年半かけて'08年1月にようやく到達した「預金残高1兆円」の大台を、大和ネクスト銀行はたった半年で突破しているのだ。

 絶好調の理由について、同行は、「340万の証券口座を有する大和証券を代理店としており、大和証券のお客さまからの預け入れが多かったことが要因」(経営企画部)と分析している。

 そうはいうものの、なんといっても同行の一番大きな魅力は、メガバンクを大幅に凌ぐ「高金利」だろう。なにしろ、大和ネクスト銀行の普通預金の金利は、メガバンクの6倍の0.12%。定期預金(1年もの)に至っては、16倍の0.4%だ。

 ここで気になるのは、殺到する預金者に高い金利を支払っても、大和ネクスト銀行の経営の健全性は保たれるのか、という点だろう。

「顧客を大和ネクスト銀行に奪われることを恐れて、『本当に金利を払うことができるのか、しっかり事業計画を審査したほうがいい』と金融庁にご注進する銀行があったほどです」(全国紙論説委員)

 金融庁監督局銀行第一課に確認すると、「個別のことについて、どういうやり取りがあったかどうかお話しすることはできません」と肯定も否定もしなかったが、いずれにせよ、預金残高が急増中の大和ネクスト銀行の高金利は、ライバルにとって脅威であるに違いない。

 先述の通り、同行の定期預金(1年もの)の金利は0.4%で、預金残高全体のおよそ4割を占めている。開業以来、同行は国債や社債などの公社債を中心に運用を行っているが、財務省の「国債金利情報」によると、11月1日の国債(1年もの)の金利は0.114%。

 つまり、預金者に支払わなければならない金利のほうが、国債の金利より高い。そのため、もし一挙に預金残高を引き出されるような事態が起きた場合、同行は金利の支払いに苦慮する可能性があるのだ。

 同行の経営企画部は、「公社債中心のバランスの取れたポートフォリオを心がけており、当初予定していた運用利回りは確保している」と胸を張る。たしかに国債の金利は5年ものが0.381%、10年ものが1.032%(いずれも11月1日)というように、満期までの期間が長い国債を買えば運用利回りはよくなるので、金利分を捻出することは可能だろう。

 ところが、公社債をメインに据えた運用の欠点を、あるメガバンクの行員は次のように指摘する。

「欧州でギリシャをはじめとする高債務国の国債の価格が暴落したように、もはや『国債で運用していれば安全』といえる時代ではなくなってしまった。そこで当行では、国債で運用するにしても短期の国債にシフトしていますが、そうなると利ざやは少なくなる。大和ネクスト銀行のように高金利ですと、ビジネスとして成り立つのか疑問です」

 心配な理由はほかにもある。先月28日に公表された「平成24年3月期 第2四半期(中間期)財務諸表」で、大和ネクスト銀行の業務純損失は10億1000万円だった。開業早々、赤字に陥っているわけだ。果たして本当に大丈夫なのか。

高金利の代償

 実は、高い金利を払うために、大和ネクスト銀行は銀行運営にかかるコストをできる限り抑えている。店舗やATM、通帳がないのは、ネットバンクの共通点といえるが、大和ネクスト銀行の場合、それが徹底されている。同じネットバンクのソニー銀行が発行しているようなキャッシュカードを、大和ネクスト銀行自体は発行していない。

 そのため、親会社の大和証券にも証券口座を作った上で、「ダイワ・カード」の発行と、証券口座・銀行口座間で自動的に資金を振り替える「スウィープサービス」を申し込む必要がある。少々手続きは面倒だが、この「ダイワ・カード」があれば、提携金融機関(大和証券やセブン銀行、ゆうちょ銀行など)のATMで現金を引き出せる。ただし、セブンイレブン内のATMで現金の引き出しができるのは平日8~21時、土曜9~21時に限られており、日曜・祝日は終日下ろせない。

 高金利の代償として、こんな不便な点があるのは事実だが、小樽商科大学大学院准教授の保田隆明氏は、大和ネクスト銀行の経営に「問題はない」と説明する。

「大和ネクスト銀行の赤字の原因は、人件費や初期投資にかかった営業経費が21億9000万円とかさんだためです。しかし、この銀行は店舗の開設などをするわけではないので、これ以上、営業経費が増えることはないと思われます。4%以上を求められる自己資本比率も23%あるので、経営は大丈夫でしょう」

 ソニー銀行も開業した'01年度上半期は14億円超の赤字を計上するなど、「開業当初は赤字になるのが一般的」(金融庁監督局銀行第一課)だという。したがって、差し当たって大和ネクスト銀行の今後を心配する必要はない、といえそうだ。

 そもそも、現在適用されている大和ネクスト銀行の金利は、あくまでも「開業記念キャンペーン」の特別金利に過ぎない。

「同じ新規参入組のセブン銀行も以前、1年ものの定期預金の金利を0.4%にしたことがありましたが、すぐやめています。おそらく預金が集まりすぎて運用が難しくなったからでしょう」(『「ネット銀行」徹底活用術』の著者で経済ジャーナリストの西野武彦氏)

 大和ネクスト銀行の特別金利は11月30日に終了予定で、「12月以降にどのような金利水準とするかは検討中の段階」(同行・経営企画部)という。いまのうちに資産を大和ネクスト銀行に預けておくのも一案かも。

「週刊現代」2011年11月19日号より

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