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運用大失敗の証拠を入手
「投信」大暴落 逃げ遅れると死ぬ

「分配金が15%とか20%ももらえると勧誘されて手を出したら、たった1ヵ月で基準価格が同じくらい目減りしたというケースはいくらでもある。しかも資産の半分くらいをつぎ込んでいて、気づいたときには大切な〝虎の子〟をほとんど失っている。そこで初めてリスクの高い商品だったと気づいても遅いんですが・・・・・・」(『投資信託事情』編集長の島田知保氏)

 投信の〝被害者〟が急増している---。もちろん欧州発の金融危機で、世界中の株式・債券が軒並み暴落していることを受けてのもの。特に日本人が好んで買っていた「高分配型」投信が暴落している。

 右の表はこの1年間で資金流入量が多かった投信トップ30の「分配金利回り」と「実績」を示したもの。モーニングスター調査分析部の辻哲氏が解説する。

「いずれも高い分配金を出している投信ばかりです。ただ分配利回りというのは、分母に基準価格、分子に直近1年間でもらえた分配金の総額を置いて計算した数値。だから1年間の基準価格の変動は加味されていない。これを勘案して出した投信の〝本当のリターン〟が表の数字。ほぼ100%、マイナスになっていることがわかります」

 すでに20%ほどのマイナスばかりという惨状なのだから、逃げ遅れることはすなわち、死を意味する。「今すぐ手放すべき投信」をセゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏に教えてもらおう。

「直ちに売却すべきは通貨選択型のハイイールド債券投信。低格付けの債券で運用するもので、1年ほど前は大人気の商品だったが、9月から分配金を下げるところが続出している。世界中で債券価格が暴落しているため、払えなくなっているのだろう。しかもこのタイプはブラジルレアルなどの外貨建てにしており、これらの通貨下落を受けて為替差損も出ている。

 二重にリスクを取ることで高配当を狙った商品だが、相場が裏目に出たいまは二重に被害が拡大しているわけだ。はっきりいってこの種のファンドは二度と生き返ることはないだろう。死に至るのは時間の問題だ」

 表中でも通貨選択型のハイイールド債券投信がいかに運用で失敗しているかよくわかるだろう。

 続いて中野氏が「即売却」の候補に挙げるのが毎月分配型のソブリン投信。債券で運用するタイプで、投信人気に火をつけたグロソブがその代表格である。

「世界的な信用不安から金利がこれほど下がると、安定した分配金が出せなくなる。もともと配当を売り物にしてきた商品だけに、それがなくなると何の魅力もない。しかも投資家がどんどん抜けているため、運用もしにくくなっている。世界経済が安定して国債の金利が上がるまで、この種のファンドが魅力を取り戻すことはないだろう」

 国別で見るとどうなるか。銀行の窓口にはブラジル、南アフリカ、オーストラリアなどの株式、債券、通貨などで運用する投信を購入する中高年がよく見られたが---。

「まずはブラジル関連投信だが、世界中のリスクマネーがブラジルから手を引き始めたため、レアルの下落が鮮明になっている。呼応するようにこのタイプの投信は9月から資金が入るより出るほうが多くなっている。もともと金融機関が力業で売ってきた投信は、縮み始めると一気に縮小する。少しでも利益が出ているなら、一刻も早く逃げるべきだ」

 南アフリカ関連ファンドも厳しいという。

「南アフリカが高金利なのは確かだが、それはインフレ率が高いから。長期的に見るとインフレ率が高く経済が不安定なところにマネーが定着することはない。しかも新興国は市場が小さいため、投機マネーの動きが極端な形で出やすい。中長期的には景気が悪化、金利も通貨も下落するだろう。もともとこうした市場に投資しているのは先進国の投機マネーなので、世界経済が復活しない限りこちらも復活することはない」

 ブラジルや南アフリカと「資源大国」という点で変わりはないオーストラリア関連投信はどうか。実は前出の両国と違い、「まだチャンスはある」という。どうしてか。

「数年前まで豪ドルに投資するのは日本人くらいと言われていたが、最近は世界の機関投資家もポートフォリオに組み入れるようになっているため底堅い。ある程度下がれば下値を拾う動きが出る可能性が高い。現状は資源価格安の影響で投信の成績もふるわないが、もう一段下げたところで買うのはいいのでは。ただしその場合、長期投資で臨むのではなく、短期の利ざやを狙いたい」

 同じく中国関連投信も「来るべきタイミングに備えるべし」---。

「中国の株式市場はこの1年ほど高値からの調整が続いていて、バブル的な相場にはなりにくくなっている。ただ、それで中国に投資して儲かる時代は終わった、と結論を出すのは早計。経済が拡大するポテンシャルが大きいのは間違いなく、ある程度の調整が終われば、再び上昇局面入りするタイミングが来る。すでに利益が出ているなら一旦売却。これから投資するならしばらく様子をみたほうがいいだろう」

 ちなみに元の切り上げを見越した投資も盛んだが、そのメリットを享受したいなら投信より元預金がおススメだという。

 では世界同時不況の煽りを受け、企業が散々な決算を続けている日本はどうか。

日本関連投信だが、まずは日経平均やTOPIX連動の投信を長期で持つ時代は終わったと考えるべきだ。株式市場は企業が生み出す付加価値を反映するが、日本全体が安定的に付加価値を生み続けることはもう期待できない。日本に投資したいなら、日経平均など市場全体を買うのではなく、より個別に成長性のある企業に集中投資する投信を選ぶべきだ。ただ、どの投信がそれに該当するのか見極めるのは簡単ではないが」

 見てきたように、いまは「投信不況」の時代。下手に手を出しても、旨みは少ない。営業マンのセールストークに乗せられ、グロソブに始まり、ブラジル関連、通貨選択型と流行モノにばかり手を出して損を続けている人もいるはずだ。マイベンチマーク取締役の服部哲也氏はこう警鐘を鳴らす。

「最近ではこっそり手数料を高くしている投信が増えている。また買い換えるときに、高い手数料を払わされる投信も出てきている。分配金だけに目がいって、落とし穴にはまらないように注意してほしい」

「週刊現代」2011年11月19日号より

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