あまりに安易な郵政基本法の「過疎の郵便局」維持策
国営回帰派との無益な論争で時間不足に

 鳩山由紀夫内閣が今通常国会に提出する方針の「郵政改革基本法」作りが大詰めを迎えた。

 小泉郵政民営化の行き過ぎを修正し、「ユニバーサルサービス」(山間や島嶼部といった僻地も含めて、全国に広くあまねく郵便・金融サービスを提供すること)を維持する仕組みの再構築を目指していた。

 しかし現時点では、民間企業としての自助努力や利用者の負担を促す方策が貧弱であり、「親方・日の丸型の方策が中心だ」とか、「国営時代のような民業圧迫だ」といった批判を呼びかねない内容に収束しそうな雲行きになっている。

 というのは、主な具体策が、
1. 日本郵政グループ株の政府保有
2. 消費税の免除
3. 郵便貯金、簡易生命保険の限度枠の拡大
――などに限定されているからだ。

 元凶は、7月に迫った参議院議員選挙をにらんだパフォーマンスや、もはや過去の人である郵政官僚OBの水面下での議論への介入だった。彼らが、日本郵政グループをかつてのような国営企業に戻そうと試みているため、議論が空転し、抜本策が講じられなかったのだ。

 政府・与党としては、今通常国会の法案提出期限が3月12日に迫っており、内容が満足できるものでなくても、法案をとりまとめたいところだろう。しかし、これで改革にピリオドを打つのではない。

 議論を継続して、秋の国会に改革基本法の第2弾を提出することが期待される。特に、電話のユニバーサルサービス維持で実績のある「ユニバーサルサービス・ファンド」の郵便版や金融版の導入は不可避の議論ではないだろうか。

NTTグループの二の舞になる懸念

 政府・与党がとりまとめようとしている郵政改革の基本理念は、小泉民営化において「公共性」と「地域制」の2つが軽視されたとの反省に立って、この2つを重視する改革を行うというものだ。

 そのため、一義的には、「政府が国民に対して負っている」という「ユニバーサルサービスの提供義務」を、法的に日本郵政(新たな親会社)に転嫁する。その代わりに、日本郵政がその提供義務を果たすことができるような体制を構築する必要があるとして、経営や収益の面からの基盤整備を行う発想となっている。

 具体策としては、第一に、経営体制の見直しを打ち出した。現在の持ち株会社の「日本郵政」に、子会社の「郵便事業」と「郵便局」を統合して、新たな親会社にすることとした。その下に、「郵便貯金銀行」と「郵便保険会社」をぶら下げる。この結果、日本郵政グループは、従来の5社体制から、3社体制に衣替えすることになる。

 ここで重要なのが、政府の親会社への出資比率と、親会社の金融2社への出資比率である。現在のところ、それぞれ敵対的買収などに拒否権を行使することができる「3分の1超」とする案が有力だ。

 金融2社、中でも郵貯銀行は、日本郵政グループの稼ぎ頭と言うべき存在なので、親会社が金融2社株を保有することによって、将来もこの2社をグループ内にとどめておくことができて収益基盤が安定するとの読みもあるという。

 しかし、こうなると、相応の批判が出てくる可能性がある。というのは、こうした体制は、そもそも現行のNTT持ち株会社やNTTドコモの体制を参考に考えられたものであるからだ。

 NTTグループの経営においては、こうした株主構成が原因のひとつになって、同グループが一般の株主よりも、政府や親会社の顔色を伺う傾向が強い。投資家にとって投資する魅力が乏しいというネガティブな評価も多かった。こうしたネガティブな評価が、今後は、郵政グループにも、つきまとう懸念が生じているわけだ。

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