雑誌
福島第一原発出口のない闘い
心身ともに疲労困憊、現場は危険な状況にある

総理からの電話

 福島第一原発の現場でいまもっとも懸念されているのは、新たな水素爆発である。

 12日の記者会見で、代谷誠治・原子力安全委員会委員は本誌記者の質問にこう答えている。

「大規模な水素爆発が起こったとすると、(炉の)なかのもの(放射性物質)が全部出るわけですから、これは大変なことになります。いまでも、そういう本当に最悪のシナリオといいますか、いま考えられる最悪のシナリオを考えますと、やはり原発から20~30km圏内(の住民に)は『どうぞお帰りください』と言える状況にはない。

 ただし、私たちとしては、水素爆発の危険はかなり少なくなってきていると思っているところです」

 2号機では、タービン建屋に溜まった高濃度汚染水の排水が進み、炉心冷却装置の復旧に取り掛かることを目指しているが、放射線量の測定など作業は山積みだ。

 小康状態と思われていた4号機では、使用済み燃料プールの温度が90度まで上がり、慌てて注水が行われた。本誌先週号でアメリカのエンジニア、アーノルド・ガンダーセン氏が語っていた「4号機の燃料が一部露出している」という危惧が、的中する形になった。

 3つの原子炉、4つの使用済み燃料プールの「7頭の怪物」のうち、ひとつを抑えると別のひとつが頭をもたげる、いたちごっこのような状態に陥っている。今後の手順について、東京電力幹部は、

「なんとか今月中に炉心冷却装置の復旧をやりたい。遅くともGW明けを目指したい。同時に、冷却装置の復旧ができなかったときのために、外付けの冷却装置を準備している。必要な部品は、すでに揃えた」

 と話すが、いまだ楽観ムードはない。

 実はこの「外付け冷却装置」のアイデアを出したのは、佐賀大学元学長で福島第一原発の復水器の設計者でもある上原春男氏である。上原氏自身が語る。

「外付けの熱交換器による冷却システムを提案したのは3月19日で、話した相手は玄葉光一郎国家戦略担当相です。

 海水を利用したもので、いま炉から出ている崩壊熱を取り除けるだけの能力はある。私は原子炉の図面を見ていないので、どこに取り付けるかは東京電力の判断。4月4日に、枝野幸男官房長官から『上原先生の考え方(システム)を採用いたします』という連絡がありました。細野豪志首相補佐官からも、同様の連絡がありました。ところが、いまだに計画が動き出している気配がない。もし部品が揃っているなら、組み立ては1~2日あれば完了するはずです」

 上原氏が考案したのは、パイプを通じて圧力容器のなかに水を流し込み、排出口から出して循環させるという冷却システム。配管が一部壊れていても、いくつもの配管系統のうちどれかを使えば冷却は可能だという。

「3月20日ごろには、菅直人総理からも連絡がありました。『ご提案いただきありがとうございます』というお礼の電話でした。それなのに、なぜいまだに実現しないのか。私としては、残念というのを通り越してイライラしています」(上原氏)

 この外付け冷却装置のアイデアについて、北海道大学大学院医学研究科の石川正純教授の見解はこうだ。

「外付けの循環型冷却装置は、事態収束に向けて必須です。しかし、核燃料が1000度を超えて炉の中が空焚きになっている状態で水を入れると、水蒸気爆発を起こす可能性がある。圧力容器がどこまで耐えられるか心配です。その場合にはベント(弁を開く)をする必要がある。ただ、多量の放射性物質を放出するわけですから、どこまで近づけるかという問題がある」

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