銅価格の急落が暗示する世界経済の「暗い先行き」

Economy エコノミスト UK

2011年11月26日(土) クーリエ

 現代社会のいたるところで利用されている「銅」。あまりに身近で意識されないが、この金属には貴重な"経済情報"がつまっているという。

 世界経済の不安定化にともない、金価格の上昇が続いている。だが、経済の重大な変化を語るうえで欠かせない金属はほかにもある。それが銅だ。

 経済予測の"達人"として「ドクター・カッパー(銅博士)」という異名がつけられるほど、銅という金属の価格は景気の動向に敏感だ。

 銅は電気や熱の伝導性に優れており、その用途は世界をつなぐ銅線や銅管をはじめ非常に多様である。自動車1台には平均で25kg以上の銅が使われており、パソコンや携帯電話などさまざまな電子機器の配線や接点などにも使われる。

  いたるところで利用されるので、銅の需要増加は、製造業や建設業の景気が上昇する兆しをいちはやく反映することになる。たとえば、3年前の世界的な信用危機においても早い段階で銅価格は下落したし、08年末には株式市場の反発より数ヵ月も早く持ち直した。

 こうした銅の"予知能力"が、世界経済の先行きに対して懸念を示している。景気の二番底への不安が募るなか、価格が急落しているのだ。

 もっとも、銅価格が先進国経済の浮き沈みに対し、以前ほど敏感ではなくなっているのも事実だ。その原因は破竹の勢いで成長する中国経済だ。03年当時、銅の取引価格は1tあたり2000ドル(約16万円)を下回っていた。それが11年に入って1万ドルにまで達した。

 中国の都市化と工業化の規模は膨大でどちらも大量の銅を必要とする。昨年生産された銅1600万tのうち、少なくとも40%が(50%という数字もある)中国で消費された。また、世界の銅需要は20年までに65%以上増えて2700万tに達すると見られている。

 銅には代わりとなる素材がなく、急に採掘量を増やすことも難しいため、価格はしばらく高水準を保つだろうと考えられる。北南米やオーストラリアなど採掘がさかんな地域では、ある程度の埋蔵量が期待できる鉱脈は数えるほどしかない。ザンビアやコンゴ民主共和国にかけての鉱山は地域リスクも高いし、地下深いうえに小規模だ。

エコノミスト

 アフガニスタンにも中国資本の銅鉱山があるが、道路や鉄道、電気、水道にいたるまで主要なインフラが不足しており、採掘許可の手続きにも時間がかかるため、新規開発のコストは膨大なものになるだろう。

 直近の銅価格の急落が世界経済の何を"予知"しているのか正確に知ることは難しい。単なる調整局面なのか、あるいは目前に迫っている危機を警告しているのだろうか……。

 

COURRiER Japon

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