ライフ
「『スティーブ・ジョブズ』秘話 並みの経営書とは違う『洗練を極めれば簡素になる』という生き方」佐々木俊尚×井口耕二Vol.1

(左)佐々木俊尚(ITジャーナリスト)さん、(右)井口耕二(『スティーブ・ジョブズ』翻訳者)

佐々木: 上下二巻、かなりの分量ですが、ものすごくおもしろくて、読みだすと止まらない良い本だと思います。これは、いつ原稿を見たんですか。

井口: 実は、何回かに分けて原稿がきているんです。上巻分くらいが7月の頭にきているんですね。その後8月の頭に残りの四分の三か三分の二くらいがきて、最後まで届いたのが9月の半ばです。

佐々木: ということは、7月の段階ではまだ全部書ききれていなかったんですかね。

井口: そうですね、その段階では「後ろのほうの章はまだ書けていないから」ということでした。

「ジョブズはかなりいやな奴だとわかった」

佐々木: 当初は来年3月発売の予定でしたか。全世界同時発売というのは最初から決まっていたんですか。3月だったのが11月に繰り上がって、それがまた10月になったんですよね。それには何か事情があったんですか。

井口: 11月に繰り上がったのは、アメリカのいわゆるクリスマス商戦に間に合わせたいということでした。11月の半ばか月末に、ということでした。これは、7月、私が翻訳に掛かる段階でもう決まっていて、相当強行軍でやらざるを得ないということで進んでいました。最後の最後は、やはりジョブズが亡くなってしまったことで、アメリカが4週間前倒しにするということになりました。日本側は、さらに4週間前倒しになると、私だけでなく編集さんや校正さんなど後の工程の方も全員死ぬような思いだったと思います。

佐々木: 僕が読んだのはつい最近で、月曜日に本をいただいて、火曜日に大阪へ出張したので新幹線の中で読んで、下巻に関しては昨日受け取って昨日の夜から今朝に掛けて読みました。それだけ労力を掛けて作った割には2日間くらいで読んでしまったのが申し訳なく感じます。

井口: そのくらい一気におもしろく読んでいただけると、それがいちばんなので。

佐々木: ちょっと感想をお話ししますと、まず、ものすごく読みやすい本ですね。これは井口さんの翻訳が素晴らしいということもある。非常に平易な文章で、しかも技術的な部分についても、一般書を読んでいると「それは違うよ」と思うところがあったりするのですが、そういう部分がまったくありませんでした。われわれのようなITの業界にいる人間にも、非常にすらすら読めておもしろいと思いました。

 読んでみてわかったのは、やはり「ジョブズってかなりいやな奴だな」ということですね(笑)、正直なところを言えば。とくにここ数年、iPhone、iPadを展開して、なおかつ亡くなられたことでカリスマ視され、神話化されている部分があります。今ではまるで神様のような扱いになっていますが、上巻にはApple Iなんかを作っている頃の話が出ていて、二十代くらいの話を読んでいくと、本当に面倒くさくて大変な人だな、と。

『スティーブ・ジョブズ I』
ウォルター・アイザックソン(著)、井口 耕二(翻訳)
⇒本を予約する(AMAZON)
⇒本を予約する(楽天)

 「これは耐えられない」と思ったのは、「菜食をしていれば臭いがしないから、風呂に入らなくても大丈夫だ」と思い込んでいて、臭くてたまらなかったというところです。まあ、極端な人ですね。それが最初に「おお、こういう人だったのか」と感じたところです。

 もう一つは、彼のビジネスのやり方って、ほかの人にとってほとんど参考にならないんじゃないかということです(笑)。

井口: ITは当たれば良いですけど、外したら会社を賭けちゃいますからね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら