普天間問題の鍵を握る国民新党
防衛省も外務省も大歓迎

 検察と民主党の小沢一郎幹事長の間で展開されている権力闘争は、2月4日に石川知裕衆議院議員ら小沢氏の元秘書3名が政治資金規正法違反容疑(虚偽記入)で起訴されたが、小沢氏は不起訴となり、「痛み分け」の状態だ。

 しかし、両者の睨み合いは、依然として続いている。民主党の関心は、権力基盤を維持するために極端に内向きになっている。

 そのような状況で、米海兵隊の普天間飛行場移設問題で、国民新党の影響力が急速に拡大している。キーパーソンは、国民新党の下地幹郎政調会長(衆議院議員)だ。

 全国紙を読んでいても、普天間問題に関する重要情報が抜け落ちていることがある。それだから、沖縄の地方紙を読むことが不可欠だ。ちなみに東京の主要国インテリジェンス機関は、琉球新報、沖縄タイムスを注意深く読んで、本国に報告している。

 2月15日の琉球新報が、平野博文内閣官房副長官の主導で、政府がキャンプ・シュワブ沿岸への移設を模索していると報じた。

<政府は米軍普天間飛行場移設に関する最終的な決着案として、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ陸上部分への移設を模索していることが14日、複数の政府関係者の話で分かった。

 米側とも交渉を進めている模様だ。政府与党3党の沖縄基地問題検討委員会で新たな移設先の検討を進める中、同検討委とは別に政府内で議論が進められていることに対し、検討委の議論軽視とも受け取れ、与党内の反発も予想される。

 名護市への移設反対を掲げ当選した稲嶺進市長は同日、シュワブ内への移設に反対する考えを明らかにした。

 シュワブ陸上案の検討は、防衛省政務三役直属の特命作業班「普天間代替施設検討チーム」が中心になって進められている。関係者によると、平野博文官房長官が2月はじめ、国外、県外への移転が不可能となった場合の方策として北沢俊美防衛相に検討を指示した。

 北沢氏は、検討委の議論との整合性を図るため、検討委員である国民新党の下地幹郎政調会長に、国民新党案としてシュワブ陸上案を委員会に提案するよう要請した。>(2月15日琉球新報)

 下地幹郎衆議院議員は、現在、沖縄から選出されている国会議員の中で、もっとも活動的だ。かつて下地氏は、自民党で強い影響力をもっていた鈴木宗男衆議院議員を支持する「ムネムネ会」の有力メンバーであった。同時に、田中真紀子外相の側近でもあった。

 2001~02年にかけ、鈴木氏と田中氏は本格的な「戦争」を展開していたが、その両者と平然と親しくすることができる下地氏の特異な才能を目の当たりにし、筆者は驚いた。

小沢一郎との正面衝突はあるのか

 シュワブ陸上案は、1998年の日米特別行動委員会(SACO)の協議において浮上し、米軍再編協議でも、守屋武昌元防衛事務次官(東京地方検察庁特別捜査部により収賄容疑で逮捕、起訴され、一審、控訴審で懲役2年6月の実刑判決を言い渡され、現在、最高裁に上告中)が日米交渉で推進した経緯がある。

 社民党は、国民新党の普天間飛行場の沖縄県内移設案を手厳しく批判した。これに対して、下地政調会長は、
<「不愉快だ。社民党と基地問題の協議をしないという気持ちにもなりかねない」と語った。/下地氏は、米軍嘉手納基地に統合するか、キャンプ・シュワブ陸上部に滑走路を建設する国民新党案について「沖縄県民に新たな民有地の提供を求める必要もなく、県民のためにも日米安保のためにもなる案だ」と強調した。北沢俊美防衛相と基地問題について協議後、防衛省内で記者団に語った。>(2月19日産経新聞)
ということだ。

 防衛官僚も外務官僚も、沖縄出身の下地氏が沖縄県内への移設を提案してくれたので、随喜の涙を流して喜んでいると思う。この流れを米国の「日米安保マフィア」も歓迎するだろう。

 キャンプ・シュワブがある辺野古の青い海を埋め立てるべきでないとする民主党の小沢一郎幹事長と下地政調会長が正面衝突することになるのであろうか? それとも衝突を避ける秘策が下地氏にあるのだろうか? 実に興味深い状況だ。

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著者:佐藤優
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