川端大臣はプラチナバンド900MHz「周波数オークション」の構造的欠陥をご存知か
史上最大2,100億円の電波版「地上げ」制度に問題あり

国公認の史上最大の「地上げ」?

「大臣、これはひょっとすると、国公認の史上最大の『地上げ』になるかもしれません。しかも今回のは不動産ではなく電波という目に見えない資産を対象としてします。それでもよろしいでしょうか」 大臣秘書官の方はこう呟いたのかもしれない。

 携帯電話各社が喉から手が出るほど欲しい、900MHz帯の周波数免許付与方式案、しかも「オークション的な考え方」に基づく付与方式案が、さる10月21日に川端大臣名で総務省からようやく提示された

別添12がそれに相当するが、概要は次のとおりである。

● 割り当てる周波数幅は15MHz×2とし、それを一者に付与する
● 既存の周波数利用者の移行が必要になるが、そのための費用は当該周波数を希望する者が負担する
● 周波数割り当ての審査基準には、「絶対審査基準(最低限満たすべき基準)」と「競願時審査基準」の二種類がある
● 「絶対審査基準」とは設備の整備計画、事業計画、一定時期までの通信サービスの高速化に加えて、周波数移行に最低限必要な1,200億円の資金調達の可否である
● 「競願時審査基準」とは周波数移行費用(上限2,100億円)、エリアカバー率、周波数移行体制の充実度合い、MVNOへの開放度合い、周波数の割り当て状況や逼迫度合い等である

 もっと簡単にいえば、1,200億円を下限とし、2,100億円を上限とする一種のオークションである。そして、2,100億円で複数者がはりついた場合には、エリアカバー率や周波数移行体制の充実度合い等の観点で審査を行って、最後に一者が残るまで振り落としていくのである。

 ただし、1,200億円~2,100億円は国に入るお金ではない。すなわち、次のようなスキームになっているのである。

● 周波数移行に必要な1,200億円については、残高証明や融資の約束を証明する書類等を揃えればいいだけであり、国に保証金や担保として差し出す必要はない
● 落札価格は1,200億円から2,100億円の間となるが、これも、新規利用者が既存利用者に支払うものであって、国に入るお金ではない
● しかも、実際に新規利用者が既存利用者のために負担する金額と落札価格は必ずしも一致するわけでない。すなわち、新規利用者は既存利用者に対して、周波数の移行に伴う費用の負担を約束するのであって、実際の費用負担は必ずしも指値とは一致しない。入札価格は「バーチャルな」価格となる

 民間事業者相互の間で、周波数の移行に伴う費用をやりとりスキームは今年施行された改正電波法によって可能となった。確かに法に基づくスキームであるが、あらためて実際に適用されるとなると、このスキームは本当に正しい制度設計なのかと疑問に思ってしまう。

 たとえてみれば、こんな状況なのである。

 現在、国は東京の都心の一等地に土地を保有しており、定期借地権をいくつかの借主に提供し、借主は住居を建てて居住している。今回、大規模都市開発に伴い、既存の借主は別の土地に引越ししてもらう。引越し費用は新たな借主がすべて負担する。一応、オークションによって入札を行い新しい借り手を決めるが、オークションの上限は2,100億円とされており、しかも、実際の引越し費用がいくらかかったかは国は関知しない。そして、新たな借主にはなるべく「地上げ」が得意な事業者を選定する

「地上げ」行為に経済的合理性がないわけではない。土地の経済的効果の高い利用のためには、立ち退きの支援も必要になる。ただし、今回は国民が保有する資産が対象なのである。

 いや、個人の私有地であっても、上記のような状況はありうるのだろうか。つまり、あなたが所有する土地に、借主が家を建てて住んでいるものとしよう。大規模都市開発によって既存の借主には出ていってもらって新たな借主に住んでもらう場合、土地の所有者であるあなたを抜きにして、既存の借主と新規の借主との間で、引越し費用のやりとりをするということがありうるだろうか。結果として、新たな借主が負担することになるとしても、いったんは土地の所有者であるあなたが、既存の借主のために適正な水準の引越し費用を負担するというのが普通の姿ではないだろうか。

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