長谷川幸洋「ニュースの深層」
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「決裂できないから交渉しない」「アメリカの陰謀」なんてナイーブすぎる。日本に必要なのはTPPを改革に利用する「したたかさ」だ

2011年11月04日(金) 長谷川 幸洋
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〔PHOTO〕gettyimages

 環太平洋連携協定(TPP)の交渉に日本が参加すべきかどうかをめぐって、侃々諤々の議論が続いている。1980年代後半の牛肉・オレンジ問題をはじめ、これまで日本は何度も自由化交渉で強い反対論にぶつかったが、なんとか乗り越えてきた経験がある。

 そんな過去の歴史を思い浮かべても、どうも今回のTPP論議には違和感を覚える。いったい、なんでそんなにもめるのか。腹にすとんと落ちないのだ。そこで問題を整理してみる。

 まず、今回は「交渉に妥結するかどうか」ではなく「交渉に参加すべきかどうか」という話である。交渉の出口をめぐる賛否両論ではなく、入り口論だ。交渉に入って話を聞いてみたら、とても条件を飲めないから決裂というならまだ分かる。だが、交渉するかどうかでもめるというのはどうしたわけか。

「例外なき自由化」は本当か

 一つの理由はTPPが10年間ですべての関税を撤廃する「例外なき自由化」の旗を掲げているからだろう。過去の通商交渉は同じく自由化を掲げていても、コメをはじめいくつかの農産物は事実上、例外扱いされて高関税を維持できた。たとえば、日本がシンガポールなどいくつかの国と結んできた経済連携協定(EPA)もそうだ。

 世界貿易機関(WTO)協定は24条で「実質上すべての貿易品目について妥当な期間内に関税を廃止する」ことを自由貿易協定(FTA、経済連携協定の中核部分)の条件に定めている。だから、本来なら農産物も関税を撤廃するのが筋だ。

 ところがWTOは「実質上すべて」という部分を「8割強くらい」と解釈して、残りは例外にしてきた。それでWTO協定違反ではないと認められてきた。今回のTPPはそこのところで「すべての関税を撤廃」と高らかに目標を掲げたので、農家は「今度こそ逃げ切れない」とみて大騒ぎになっている。

 だが、それは本当か。

次ページ  結論から言えば、こればかりは…
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