政府の復興支援策を年度内実施へ
復興庁設置、特区、交付金制度創設・・・。[震災]

東日本大震災復興対策本部であいさつする野田佳彦首相(中央)。左は平野達男復興相=首相官邸で10月7日

 東日本大震災の復興に向けて政府の支援策の全体像がようやくまとまった。被災地に限定して規制緩和や税・財政・金融面の優遇措置を行う「復興特別区域(特区)法案」、被災自治体が一定の範囲で自由に使える「復興交付金制度」、政府の復興行政の司令塔となる「復興庁設置法案」だ。

 さらに復興事業の地方負担を実質ゼロとする復興特別交付金の創設も決まった。いずれも開会中の臨時国会で11年度第3次補正予算案や復興増税法案とともに提出され、年度内には実施に移されるが、被災自治体には課題が山積している。

 政府は10月7日の復興対策本部で、復興特区法案、復興交付金制度、復興庁設置法案の3点セットの基本方針を了承した。復興特区や復興交付金制度は今春以降、被災自治体から再三要望があり、復興構想会議が6月にまとめた提言や、7月に政府が策定した復興基本方針でも掲げられていたが、臨時国会開会が迫った10月にようやく概要が示された。

 復興特区と復興交付金は、いずれも民主党政権が地方分権改革の一環として進めてきた「総合特区」「一括交付金」を発展させたものだ。

 復興特区制度は、国が規制緩和や税制特例を復興特区法や政省令でメニュー化し、被災自治体が選択する「バイキング方式」が基本だ。特区の対象地域となる特定被災地域220市町村が、活用したいメニューや事業内容を計画にまとめて国に提出する。

 自治体が策定する計画は、
①住宅の高台移転など土地利用の再編を行う「復興整備計画」
②規制緩和や税制特例を活用する「復興推進計画」
③復興交付金を申請する「復興交付金事業計画」
---の3種類。計画は必要に応じて何度でも策定できるほか、国と地方の協議会を通じて特例の追加や充実を要請できる。

 特区の目玉は、津波被災地のまちづくりを円滑に進めるための土地利用再編の特例だ。被災市町村が住宅の高台移転や市街地・農地の再開発事業を「復興整備計画」に書き込めば、必要な申請や手続きが一括して行える。また、住宅地の移転費用を国が補助する「防災集団移転促進事業」で医療・教育施設も補助対象に加えるなどの特例が適用される。

「復興推進計画」で活用できる規制緩和の特例は大きく分けて13種類。このうち、宮城県が求めていた漁業特区は、漁協が優先取得していた漁業権(養殖権)について地元漁業者7人以上が社員や株主であることなどを条件に、企業にも漁協と同等の優先権を与える。

 また、復興事業に必要であれば、政省令で定められた規制を自治体の条例で変更できる「上書き権」も認める方向だ。税制特例では、被災地の新設企業の法人税を5年間免除するほか、被災者を雇用した事業者に対し給与の10%の税額控除などが活用できる。

復興事業の地方負担をゼロに

 復興交付金は、道路や上下水道整備、集団移転事業など計40のハード事業の補助金を一括して支給するものと、ハザードマップの作成やバス路線の整備などソフトにもハードにも使えるものの2種類を用意した。

 使い道の決まった「ひも付き補助金」とは異なり、自治体が使途を決められるため、地域の実情にあった予算配分が可能となる。11年度第3次補正予算案では計1・6兆円を計上した。さらに、復興交付金による追加補助などでカバーできない地方負担分は、新たに創設する復興特別交付税で穴埋めし、復興事業にかかる地方負担を実質ゼロにする。

 復興庁設置法案には、専任の復興相を置くために閣僚定員を1人増員する規定を盛り込む方針だ。復興庁の設置期間は20年度末までとし、東京を本部に置き、岩手、宮城、福島3県に出先の「復興局」を設置する。復興庁は復興特区の認定や復興交付金の配分を所管するほか、復興関連予算の概算要求など総合調整を行う。省庁の縦割りの弊害を超えて、復興施策をスムーズに進めるため、復興庁には他省庁に対する勧告権を与えるなど「一段高い位置づけ」とする。

 ただ、被災地重視の立場から復興庁の本部を東北地方に設置するよう求める意見があるほか、自公からはインフラ整備事業などの強力な権限を集めた「スーパー官庁」を求める声もあり、同法案の修正協議の焦点となりそうだ。

 これまで、被災地の復興が進展しない原因として、国の支援策の遅れを指摘する声があった。

 津波で壊滅的な被害を受けた東北沿岸部では、多くの自治体が住宅の高台移転を計画している。しかし、住宅移転で活用する「防災集団移転促進事業」は事業費の94パーセントを国が補助金や地方交付税で負担するものの、財政力の弱い自治体にとって残り6パーセント負担は荷が重かった。

 例えば、宮城県南三陸町では復興事業費1395億円を見込むが、現行制度のままでは同町の負担は590億円に達する見通しだ。同町は「土木事業の予算は数億円。単純計算すると返済に数百年かかる」(同町幹部)と国の支援拡充を求めていた。

 臨時国会で第3次補正予算とともに復興特区法案や復興庁法案が成立・施行すれば、復興事業の財政面と制度面の課題の多くが解消される。

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