社会保障と税の共通番号新たな社会インフラ導入へ 年金、医療、介護、福祉、労働保険、税務の各分野[共通番号制]
国税局職員からアドバイスを受けてe―Taxでの確定申告を体験するプロゴルファーの馬場ゆかりさん。共通番号が導入されればさらに活用が期待される=福岡市博多区で2月16日

 国民一人一人に番号を割り振る「社会保障と税の共通番号」の導入へ向けた作業が大詰めを迎えている。菅直人前政権が引き際にまとめた大綱に基づき関係法案の策定を急ピッチで進めているが、今秋の国会提出という当初のスケジュールから遅れており、15年1月の利用開始という計画達成を危ぶむ声もある。

 税務など行政の効率化と国民の利便性向上を図る新たな社会インフラへの期待が高まる一方で、個人情報の漏えいの危険性への懸念も指摘される。社会保障と税の一体改革を進めるための基盤整備であり、野田佳彦政権にとって今年度内に片づけなくてはいけない大仕事だ。

 共通番号制度の導入に向けた議論は2009年9月の政権交代で民主党政権が誕生したことを契機に加速された。「無駄をなくせば財源が出てくる」と乱暴な財源見通しですっかり評判を落とした「09年民主党マニフェスト政策集」だが、番号制度についてはこう明記している。

 「厳しい財政状況の中で国民生活の安定、社会の活力維持を実現するためには、真に支援の必要な人を政府が的確に把握し(略)このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入します」

 野党時代は「税」を先に出していたが政権与党になってからは、「社会保障・税」と言い換え、今年6月30に政府・与党社会保障改革本部(本部長・菅直人首相=当時)で「社会保障・税番号大綱」を決定した。同時に公募で共通番号の正式名称を「マイナンバー」とすると発表した。

 財務省主税局総務課長などを歴任した税制のエキスパートである森信茂樹中央大法科大学院教授は「自民党政権時代から納税者番号などの議論はあったがなかなか進まなかった。何にどのように利用するか中身の議論はまだ不十分だがハード面としての番号制度が実現する運びになったことは政権交代の成果だ」と一定の評価をする。

 野党・民主党時代から党税制調査会などで番号制度の準備に携わってきた旧大蔵官僚出身の古川元久国家戦略・経済財政担当相が、社会保障・税一体改革も担当し、番号制度に関する実務検討会の座長を務める。

 その古川氏は10月4日の記者会見で「社会保障・税の一体改革、特に社会保障の抜本改革をするに当たっては、社会保障・税の共通番号、マイナンバーの導入が重要なポイントになる。番号制の導入にむけての議論をまず最優先としてやっていきたい。できれば番号制から野党との協議が始められないかと考えている」と、秋の臨時国会での法案提出の意欲をにじませた。共通番号制度は、同じ日に決定された「社会保障と税一体改革」を進めるための新たな社会基盤と位置付けられている。

 しかし、政府・与党にとって、震災復興の本格予算となる今年度の第3次補正予算と関連法案をまず成立させることが臨時国会の最優先課題のため、消費税増税を前提にしている「一体改革」と軌を一にする共通番号導入の番号法案と関連法案については対野党対策のうえで与党内に慎重な意見があり、法案提出は年明けの通常国会へ先延ばしにされる公算が大きくなっている。

「新たな社会保障の色々なシステムの制度ができるようになる」(古川氏)という共通番号は、複数の機関にある個人情報を同一人の情報であることを確認しやすくし、徴税の効率化や隠し資産の把握の面から長く議論されてきた。そのため、国民に忌避感や警戒感が根強い。そこで今回の大綱では、所得の正確な捕捉は「公平で公正な社会を実現し、真に必要な人に対して社会保障を充実」することを理念と目的に掲げ、社会保障番号としての有用性も強調している。

 大綱で描かれている番号制度の基本的な仕組みは、①付番②情報連携③本人確認の3要素からなる。

 付番は△住民票を有する人全員に、重複のない唯一無二の番号を付ける
▽その番号は個人と会社などの民間機関、国の機関の「民―民―官」で流通可能な視認性(見える番号)
▽最新の基本4情報(名前、住所、性別、生年月日)と関連づけられる
▽法人には法人番号を付ける--としている。

 情報連携とは、複数の国や自治体など情報保有期間が相互に同一人物であるか照会するためのやり取りだ。個人情報を保護するために照会には番号とは別の符号を使う。機関相互の直接のやり取りは認められず新たに構築する「情報連携基盤」を利用することを義務付ける。この基盤を利用して、各人が自分の番号に関する個人情報のアクセス記録を確認する「マイ・ポータル」を設ける。

 なりすましなどを防止するための本人確認のためには、基本4情報と顔写真を記載したICカードを交付する。

災害時の有用性も強調

 大綱では法案化に向けて共通番号の利用分野について、年金、医療、介護、福祉、労働保険、税務の6分野をあげている。マイナンバーが記載されたICカード1枚で、年金手帳や医療保険証、介護保険証などの代用も可能にすることを想定している。

 もちろん徴税効率の向上への期待は大きい。共通番号によって、税務署に提出される各種取引上に関する法定調書の名寄せや納税申告書との突合の精度とスピードが格段に上がる。正確な所得把握をすることで控除や給付の不正利用を防止できる。09年に麻生太郎内閣が実施した定額給付金は所得制限を設けなかった理由の一つに、現行制度での正確な世帯所得を把握できないことがあった。今後の消費税増税に伴い、逆進性緩和の有効策とされる給付付き税額控除が検討されるため、所得の正確な把握が求められている。

 確定申告などの申請で各種証明書の添付が省略できるようになるなど納税者の利便も強調している。国税庁の電子申告制度「e-Tax」を活用してサラリーマンでも自主申告制度の選択的に導入を求める声もある。

 また大綱策定の過程で発生した東日本大震災を受けて、大災害時の本人確認や預貯金確認、保険機関のレセプト情報から薬の処方箋の迅速な把握など、防災分野での効果的な活用も提示している。

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