GDPプラス成長が信用できない理由
4.6%成長は「ぬか喜び」の懸念

 昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報が15日に発表され、年率換算で実質4.6%成長と大幅なプラス成長になった。景気が二番底に陥る懸念が指摘されていた中、明るい兆しと思われるかもしれないが、とんだ「ぬか喜び」に終わるかもしれない。

 というのは、日本政府のGDP統計は速報段階から確定値に修正されていく過程でぶれが大きいからだ。この速報値も最終的にその通りになるかどうかは疑わしい。

 たとえば1期前の7~9月期をみると、一次速報は4.8%と大幅なプラス成長だった。

 ところが二次速報では1.3%成長に下方修正され、さらに確定値ではなんと0%成長になってしまった。プラス成長どころか、実態は横ばいにすぎなかったわけだ。

 いつも下方修正されるとは限らない。さらに前の4~6月期がどうだったかといえば、一次速報は2.7%のプラス。二次速報でも同じ2.7%が維持されたが、最後の確定値では5.2%と大幅なプラス成長に上方修正されている(いずれも年率)。

 これらの数字のうち、新聞やテレビのメディアが大きく報じるのは一次速報である。ところが、以上のように速報値が十分に信頼できない。政府はその時点で入手できる統計情報を基にGDPの値を推計し公表しているので、後で別の統計数値が明らかになると、それを加味して新しい数値に修正するという事情がある。

 とはいえ、7~9月期のように一次速報と確定値が5%近くも下方修正されるのだから、読者や視聴者はGDP統計のニュース自体をあまり真に受けないほうが賢明だろう。

 意地悪くいえば、今回の4.6%成長だって最終的に下方修正されてしまう可能性があるので、そのおかげで次期がプラスになるという、手品のような訳の分からない事態になってしまうかもしれない。

 日本のGDPが信用できないのは、経済協力開発機構(OECD)など国際機関の間では、長く指摘されてきた問題だ。政府は改善する意向も示しているが、そろそろ本気になって取り組まないと「日本は政策論議がお粗末なだけでなく統計も途上国並み」と烙印を押されてしまいかねない。

 いや実は、鳩山由紀夫政権の掲げる成長目標がいい加減で、国際社会では「日本の話は本当か」と疑われかねない展開になりつつあるのだ。

「財務省対バッジ組」の思惑違い

 国際通貨基金(IMF)やG20(20カ国・地域)は金融危機の反省から、米国の経常赤字に象徴される世界経済の不均衡是正に取り組む姿勢を示している。その議論の前提として日本をはじめ各国に対し、成長目標について報告を求めている。

 鳩山政権は昨年末、2020年度までの平均で名目3%、実質2%を上回る成長を目指す新成長戦略の基本方針を発表している。当然、この数字を報告するはずなのだが、実は政府部内でこの3%目標を横に置いてしまおうとする動きがある。

 政府は6月までに財政再建の見通しを示す「中期財政フレーム」を策定する。古川元久内閣府副大臣は「財政健全化には将来に対する慎重な見通しが大事」と語り、3%以下の成長見通しを前提に議論する姿勢を示している。つまり、新成長戦略で示した3%成長という目標は「希望を交えた水増し」と示唆しているのだ。

 この問題は結構、根が深い。

 古川副大臣は新成長戦略の策定にかかわっておらず、中期財政フレームを霞が関で担当する財務省も実質的に戦略作りの議論から外されていた。成長戦略の中身を作ったのは経済産業省であり、最終的に3%の数字を盛り込んだのは、当時の菅直人副総理兼国家戦略相をはじめとする議員バッジ組が主導した結果と言われている。

 つまり、財政の危機的状況を強調するために低めの成長見通しを掲げたい財務省に対して、政治的に高めの数字を打ち出したい議員バッジ組という思惑の違いが背景にある。このままだと、鳩山政権は二通りの成長見通しを掲げる事態になりかねないのだ。

 国家戦略相から財務相に転じた菅副総理はひょっとすると、高めの数字から低めの数字へと方針転換せざるをえなくなるかもしれない。新成長戦略では3%の数字を掲げながら、中期財政フレームでは採用しないとなると、同じ菅大臣が扱っているだけに信頼度を問われかねない。案外、重大な政治的案件になる可能性がある。

 IMFはもちろん金融市場も目が曇っているわけではない。日本が外向きと内向き、あるいは楽観論と悲観論を適当に使い分けて説明するようなら「鳩山政権の話はいい加減」と受け止めるだろう。GDP統計のいい加減さだけでなく、政策作りの信頼性も疑われ始めているのだ。

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