国論を二分した郵政民営化と比較をしてみればーー原発事故以来、いまの政府は信用されていない。
TPPのメリット、デメリットを国民に説明を


先週は「皮肉にも円高を呼ぶ円高総合対策」を書いたら、そのとおりに円は市場最高値を更新してしまった。円高対策でなく円高呼び込み策を行ったのだから理論通り当然の結果である。

安住淳財務相は「断固たる措置を取らなければならない」と口先でいうが、為替変動の理由も理解できずにいうので、まったく相手にされていない。

この体たらくの政府に、また難題が降りかかっている。TPPだ。私のスタンスはこれまでに述べている(2010年11月15日2011年10月17日 の本コラム)。

経済政策としては、長い経済学の歴史の中で貿易・サービスの自由化はメリットがデメリットを上回ることが知られているので、最終的には誰も損をしないようにカネで対応できるという意味では、易しい問題だ。

ただし、1年前にも指摘したが、経済問題としては容易なものの、政治としては説得がなかなか苦労する問題だ。誰も不利益を被りたくないし、そのための代替補償措置の説明も時間をかけて行わなければいけない。

民主党政権は1年前からTPPへの参加をいいながら、いまだに党内でゴタゴタが続いている。大震災対応があったのは事実だが、政府の資料も基本的には1年前のままで、アップデートもあまり行われていない。一体、国民に対して、どの程度の説明が行われてきたのか。

郵政民営化と比較をしてみれば

一例をあげよう。TPPのメリット・デメリットの数字だ。貿易・サービスの自由化ではメリットがデメリットを上回るということを数字で政府として示さなければいけない。ところが、内閣府は3兆円のプラス、農水省は8兆円のマイナス、経産省は8兆円のプラスとバラバラの数字を出し、政府としての統一見解がない。

この数字の根拠を見ると、内閣府のものは、TPPによるいろいろな影響を包括的に網羅した国際機関でも使われており、GTAP(Global Trade Analysis Project)により構築された応用一般均衡モデルなので、一番まともだ。農水省や経産省は価格変化を無視した産業連関分析なので、監督業界向けのアリバイ作りといわれても仕方ないだろう。

内閣府の数字は10年間のものなので、TPP反対論者は1年では3000億円に過ぎず、だから反対というが、この数字は10年後から年間3兆円プラスという数字なので、わけがわからない。

いずれにしても、原発事故以来、政府の信用が地に落ち、もう誰も信用しなくなっているときに、TPPの交渉参加のように、時間をかけて説得すればいいものを、何もしていないだけでなく、時間を切って行うのは、政治としては不味い話だ。

TPPと似ている話として郵政民営化がある。ともに経済問題としての解は比較的容易だが、政治問題としては手順が難しい。

郵政民営化は周到に準備が進められ2003年6月から経済財政諮問会議で議論された。1年ちょっとかけて2004年9月に基本方針が作られた。その後、法案が作成され、2005年の国会に提出された。

私は、経済諮問会議で議論しているときから郵政民営化の制度設計をしていた。その中で、郵政民営化したらどうなるか、しなかったらどうなるかというシミュレーションを行い、数多くの場合で説明した。

もちろん、それだけなくあらゆる角度から検討され、政府統一見解が多数作られた。それを国民に説明したり、タウンミーティングもずいぶんと行った。

国会での議論の結果、自民党が割れたので、最終的には政治判断のために解散まで行われた。

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