世界を動かす政策プロデューサーを育てる「虎の穴」
ランド政策大学院で初講義してわかった彼らの実力

ランド大学院での初講義

 ランド公共政策大学院で初講義を持たせてもらった。テーマは日本の政策課題。私はこの講演を心から楽しみにしていた。それは世界を動かすポリシーメーカーの卵たちの実力を推し量ってみたいと思っていたからだ。結論から言うと、想定以上の実力の持ち主たちだった。彼らとの触れ合い掛け合いを存分に楽しんだ。

 それもそのはず。教授はすべてPhDを持ち、各国政府が実際使う政策をデザインしているランドの研究員たち。象牙の塔のレクチャーではなく、実際のプロジェクトで下働きをしながら実践的な公共政策を身に着けていく。

 私の講義に集まってくれたPhD候補生は全部で約30名。国籍も様々。中国、イギリス、シンガポール、イスラエル、韓国、アメリカ、インド等学校側も「10以上の国籍の学生が出てたと思う」と把握しきれないくらいの多様さ。

 私は学校で講演や授業をさせてもらう時はインタラクティブな(双方向性のある)スタイルを心掛ける。それは、おしゃべりな学生も退屈しないし、話しているこちらも学べるからだ。

 最初から質問。「君たちは日本の専門家ではないと思うが、日本という国の政策課題について見聞きしたことはあると思う。なんでもいいからそれを挙げてみてくれ」と振ってみた。

 ほぼ全員が手を挙げる。どこかのビジネススクールのように、とにかく目立たたないと成績に関わるから手を挙げるという強迫観念にとらわれた雰囲気ではない。さわやかな笑顔でかつ自信ありげに皆手を挙げている。

「少子高齢化だと思います。多分世界でも最も早く高齢化していると思います」

「デフレだと思います。確か20年くらい続いているんではないですか」

「エネルギー政策ではないですか?資源がなく、原発事故を経験したので。日本のような大きな経済ではドイツやイタリアやスイスのようにはいかないでしょう」

「財政破綻でしょう。ギリシアよりひどい状況だと聞いています」

「リーダーシップが安定しないことです。首相が誰だか国民にもわからないと聞いたことがあります」

「円高ではないでしょうか。経済が低迷している時に円が強くなれば日本の輸出企業には負担が大きいと思います」

 インタラクティブな講義は楽しいが、実はレクチャーより準備ははるかに大変だ。即興性が求められるのであらゆる質問や意見を想定して逆算して準備しなければならない。そういう意味では学生の列挙した政策課題は妥当なもので、私がエールやハーバードで議論したものとほぼ同じだった。

 一つだけ明らかに違うのは、ランドの学生は「仮説検証型」なのだ。政策課題を挙げるだけではなく、なぜそれが“課題”になるのか?その理由を自分なりに仮説を立てて今度はこちらに逆質問してくる。問題解決の前提であるロジカルシンキング(論理思考)が徹底的に鍛えられている。

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