世界を動かす政策プロデューサーを育てる「虎の穴」
ランド政策大学院で初講義してわかった彼らの実力

2011年10月31日(月) 田村 耕太郎

 

ランド大学院での初講義

 ランド公共政策大学院で初講義を持たせてもらった。テーマは日本の政策課題。私はこの講演を心から楽しみにしていた。それは世界を動かすポリシーメーカーの卵たちの実力を推し量ってみたいと思っていたからだ。結論から言うと、想定以上の実力の持ち主たちだった。彼らとの触れ合い掛け合いを存分に楽しんだ。

 それもそのはず。教授はすべてPhDを持ち、各国政府が実際使う政策をデザインしているランドの研究員たち。象牙の塔のレクチャーではなく、実際のプロジェクトで下働きをしながら実践的な公共政策を身に着けていく。

 私の講義に集まってくれたPhD候補生は全部で約30名。国籍も様々。中国、イギリス、シンガポール、イスラエル、韓国、アメリカ、インド等学校側も「10以上の国籍の学生が出てたと思う」と把握しきれないくらいの多様さ。

 私は学校で講演や授業をさせてもらう時はインタラクティブな(双方向性のある)スタイルを心掛ける。それは、おしゃべりな学生も退屈しないし、話しているこちらも学べるからだ。

 最初から質問。「君たちは日本の専門家ではないと思うが、日本という国の政策課題について見聞きしたことはあると思う。なんでもいいからそれを挙げてみてくれ」と振ってみた。

 ほぼ全員が手を挙げる。どこかのビジネススクールのように、とにかく目立たたないと成績に関わるから手を挙げるという強迫観念にとらわれた雰囲気ではない。さわやかな笑顔でかつ自信ありげに皆手を挙げている。

「少子高齢化だと思います。多分世界でも最も早く高齢化していると思います」

「デフレだと思います。確か20年くらい続いているんではないですか」

「エネルギー政策ではないですか?資源がなく、原発事故を経験したので。日本のような大きな経済ではドイツやイタリアやスイスのようにはいかないでしょう」

「財政破綻でしょう。ギリシアよりひどい状況だと聞いています」

「リーダーシップが安定しないことです。首相が誰だか国民にもわからないと聞いたことがあります」

「円高ではないでしょうか。経済が低迷している時に円が強くなれば日本の輸出企業には負担が大きいと思います」




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。