中国
モテモテの中年男性を描いたテレビドラマ『男人帮』大ヒットの裏側で、「政府批判」のバラエティ番組規制が始まった、中国テレビ界のいま
「CNTV」HPより

 中国全土で、10月22日以降、夜の街から忽然と、ひと気が消えた。超元高で不景気になったわけでも、ハイパーインフレが押し寄せたわけでもない。毎晩7時40分から9時半まで、2時間連続で放映中のテレビドラマ『男人帮』に、人々がハマっているのである。

 中国のテレビドラマは、日本のように毎週決まった曜日に1話(1時間)ずつではなく、毎日2話分(2時間)を続けて放映する。このため全20話のドラマなら10日間で、40話なら20日間で終了する。中国人はせっかちなので、「続きはまた翌週のこの時間に」などと言ったら、誰も見てくれないのだ。

 テレビは中国人の最大の娯楽であり、中国中央テレビ(日本のNHKにあたる)が14チャンネルと、各省に放送局と衛星テレビがあるため、全国の一般家庭で70チャンネルくらいが普通に見られる。このため粗製乱造で、年間1000本近いテレビドラマが作られているが、社会現象を巻き起こすほどヒットするのは、半年に一本程度だ。

 昨年最大のヒットは、外資系企業に勤める普通のOLが大出世を遂げていく物語『杜拉拉昇職記』(ドララの出世日記)だった。実際に普通のOLが書いた原作の小説は、全4巻で300万部も売れた。私も昨年は、ドラマ、小説、映画と『ドララ』にハマったが、中国の若い女性たちが抱くシンデレラ・ドリームを、まざまざと見せつけられた。

「クルマもマンションも仕事もないオレと結婚してくれ」

 今年春には、『裸婚時代』というテレビドラマが、社会現象になった。主人公は、中国の高度経済成長から取り残されたプータローの青年である。「オレには車もない、マンションもない、満足な職もない。だがキミを愛する気持ちだけは世界中の誰よりもある。オレと結婚してくれ!」。主人公の文章が、愛する女性・姚笛に叫んだこのプロポーズのセリフは、間違いなく今年の中国の流行語大賞だろう。

 私はこの異色ドラマに衝撃を受け、以後、中国の若者たちを見る目が変わった。経済大国の時代に一人っ子に生まれた「80後」(1980年代生まれ)の男の子たちは皆、幸せな「小皇帝」と思っていたが、その実、日々苦悩しながら生きているのだ。

 そして今回の『男人帮』である。何やら任侠モノのようなタイトルだが、3人の40代の上海人男ヤモメが繰り広げる、痛快な恋愛コメディである。孫紅雷、黄磊、汪俊という当代きっての3名優が、次々に20代の若い美女たちと恋に落ちる。

 孫紅雷演じるコピーライターは、デパートガールとの初対面にもかかわらず、「オレは今日あなたに出会って、初めて自分の価値を発見した」と、甘い文句で口説く。大学で演劇を教える黄磊も、銀行内で一目惚れした銀行OLに、「どのような預金になさいますか?」と聞かれ、「オレ自身をあなたに預けたい」と真面目な顔で告白する。

 文化イベント会社社長の汪俊は、親子ほども年の離れた恋人の髪を撫でながら、感慨深げに語る。「自分が18歳の時、美女たちは遠く霞んで見えて相手にしてもらえなかった。いま40代になって生活に余裕が出て、ようやく出番が来た」。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら