「仕事柄、転勤が多いのでいつ、どこで持ち家を買えばいいのか、頭を悩ませていたんです。しかし給料が大幅に減るのであれば、もう購入は断念します」
こう話すのは、東京本社に籍を置く30代の朝日新聞社員だ。
同社が2月1日、組合側に提示した「給与制度改革案」が、社内に大きな波紋を起こしている。今後、会社側と組合側との間で協議が進んで改革案が成立した場合、月額にして15万円近くも給与が減る人が出てくるからだ。別の社員が説明する。
「年齢によって賃金カットの割合は異なり、入社間もない若手は数%のダウンで済みますが、40代半ば以降の中堅・ベテランになると、10~15%も減るのです」
50歳社員の平均給与が月100万円を超えるなど、朝日新聞社員の「高給」ぶりはよく知られている。現在、全社員の平均給与は81万円ほどだが、新しい給与制度が実施されると1割近く下がって約74万円になり、総額にして年間50億円の人件費削減につながるという。
昨年秋に発表された同社の中間連結決算によると、広告収入が落ち込み、36億円の赤字だった。給与制度の変更は、将来にわたって経営の健全性を保つことが理由のようだ。朝日新聞広報部は、「労働組合と協議中の事項に関わりますので、回答は差し控えさせていただきます」と詳細を語らなかったが、同社OBの本郷美則氏は次のように指摘する。
「私が現役の頃から朝日の組合は強い。当時、『これからは紙面もカラー化の時代になるので、給与を上げるよりもカラー輪転機を買うべきだ』と主張したところ、組合の人間から『お前はいつから経営者になったんだ』と咎められたこともあった。
新聞はもはや斜陽産業です。紙で刷ってトラックで配達するというスタイルは、時代にそぐわない。今後、どうやって生き残っていくべきかを真剣に考えなければならない。朝日は新しいビジネスモデルの開発に投資すべきです」
大分と佐賀で発行している夕刊を3月末に廃止する同紙。社員の給与を死守する一方で、サービスの低下が進めば、読者離れは加速しかねない。
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