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福島第一原発の現場はもはや限界に近い
再び迫る危機
1号機から4号機まで、7つの核燃料をすべて冷却しないと、事態は収束しない〔PHOTO〕gettyimages

同位体塩素38が意味すること

 運転中だった3つの原子炉に加え、4つの使用済み燃料プール—合計7つの核燃料が、コントロール不能の化け物のように暴走し、いまだ冷温停止へのメドさえ立たない。

 1ヵ所を抑えてもほかが危機を迎え、そちらに傾注するとまた別のところから緊急事態が発生する。チェルノブイリ事故ともスリーマイル事故とも違う「フクシマ」の大問題とは、この「7頭の化け物」なのである。

 大規模な爆発を起こした3号機に集中的に放水した結果、炉心を低温・低圧力に保つことに成功したが、今度は1号機内の炉心温度が上がり始めた。さらに、定期点検中で休止していた4号機の使用済み燃料プールからも、大量の放射線が漏れている可能性がある。

 東京電力幹部はこう話す。

「社内では、楽観視する雰囲気はまるでない。放射性物質の封じ込めには、『最低でも数ヵ月はかかるな』という会話が交わされています。正直言って、いつ頃ヤマを越えるのかも見当がつかない。官邸サイドからは、『福島第一を何が何でも止めろ』と言われているが、(放射)線量が高く、復旧作業には通常の何倍も時間がかかる」

 そして、この幹部はこう続けた。

「タービン建屋内の排水が終わったら、電源復旧の〝決死隊〟が行くしかない。線量が高いのは承知のうえだから、人海戦術になる。ほかに方法がない。あったら教えてほしいくらいだ」

 別の幹部からも、こう苦しい声が漏れる。

「(原子炉を)冷やすためには水を入れ続けなければいけないが、そうすると汚い水(汚染水)が出てきてしまう。難しい。いつ終わるか、全然分からない。現場の作業員、幹部も、肉体的な疲労以上に精神的に限界に達しつつある。悪夢を見ているようで、満足に仮眠もとれないようだ」

 福島第一原発の現状について新聞、テレビなどの報道量は一時に比べかなり減ったが、状況が改善しているわけではない。元東芝の原子炉技術者・後藤政志氏はこう危惧している。

「いまは小康状態を保っているように見えますが、この状態を本当に維持できるのかどうか、心配する声が専門家の間で出ています。いまのように外から水を入れるだけで、圧力容器、格納容器の温度を維持できるのか。水素爆発の可能性も、まだあります。燃料の露出があれば、水素は出てきますし、それが酸素と反応すれば爆発する。すべての水素が出きったとは考えていません」

 後藤氏の発言を裏付けるように、東京電力は4月6日深夜から、1号機に窒素ガスの注入を開始した。格納容器中の酸素の割合を相対的に減らすことによって、水素爆発を回避しようという狙いである。

 アメリカの原発関連会社副社長を務めたアーノルド・ガンダーセン氏は公表された資料・写真から1号機、4号機について重要な指摘をしている。

「東京電力が発表したデータによると、1号機からはヨウ素131と、テルル129が検出されています。これは、1号機の炉内で核分裂の連鎖反応が起きている明白な証拠です。

 その理由として考えられるのは、当初、炉を冷やすために入れた海水中に含まれた成分が、壊れた核燃料と反応し、小さな連鎖反応を起こしているということです。原発は地震の直後、制御棒が入って自動停止したのに、またひとりでに反応が起きているんです。

 半減期が8日間と短いヨウ素が、1号機だけほかの10倍も検出されているのは1号機内で反応が起きているためでしょう。また、テルル129は連鎖反応が起きているときにしか、検出されない物質です」

 ガンダーセン氏はもう一点、「同位体塩素38」が検出されていることにも注目する。これは自然界に存在しないが、海水に含まれる通常の塩素37が中性子を吸収することによって発生するという。つまり、はじめに原子炉内に注入した海水が核燃料と反応し、塩素38を発生させた可能性が極めて高い。

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