雑誌
大反響第5弾 われらの年金を返せ!
厚生省年金局元数理課長坪野剛司氏
"年金大崩壊、
本当のことを話しましょう"

「支給額を下げる」「支給年齢を上げる」「保険料率を引き上げる」------75歳支給開始も選択肢の一つ

 まるで騙し討ちだ。数十年にわたりコツコツ真面目に掛け金を払い込んできたはずが、いまになって約束の額は払えないという。どうしてこんなことになるのか。内幕を知る元年金官僚が真相を話した。

非現実的な運用利回り

坪野剛司氏は30年前、国民年金の制度設計に関わった

「年金の財政状態が逼迫(ひっぱく)している本当の原因は、年金積立金の運用損や保険料収入の不足です。

 ここ10年、運用利回りや賃金上昇率などが年金財政を健全にするための数値と乖離しています。積立金の運用利回りを毎年4.1%と想定しているのも、何故そんなに高い数字なのかと思うほどで、収支も取れていません。

 リーマンショックや東日本大震災が起こり、さらにギリシャが破綻しかねない金融危機の問題も出ている。今は悪いことが重なり過ぎています。こういう時代に、日本の年金制度だけが安泰ということはあり得ません。この経済状態がずっと続いて世界恐慌になれば、年金も崩れるでしょう」

 こう語るのは、'60年に厚生省(現・厚生労働省)に入省し、'85年から'91年まで年金局で数理課長を務めた坪野剛司氏である。

 年金局数理課といえば、年金財政の収支見通し、積立金の増減などを数理計算しながら保険料率や給付額を見定める、年金制度の中枢。そこに長年勤めた年金のプロが、現行の制度に警鐘を鳴らしながら、今回、厚労省が発表した年金支給開始年齢の引き上げ案を強く批判する。

 はじめに、10月11日に厚労省が社会保障審議会年金部会に提示した3つの案を簡単にまとめておこう。現行の制度では、厚生年金の支給開始年齢を60歳から最終的に65歳まで引き上げるが、経過措置として'13年から「3年に1歳」ずつ引き上げていくとしている。

 今回新たに出された案の1つ目は、支給開始年齢引き上げペースを「2年に1歳」と速める。2つ目は、支給開始を68歳からとし、「2年に1歳」ずつ引き上げる。3つ目は、68歳支給開始、ただし引き上げを「3年に1歳」ずつにする、というものだ。坪野氏が言う。

「厚労省から3案が提示されたというニュースを見て驚きました。『何だこれは?』と。その後すぐに、年金局数理課にいる後輩に会って聞いたんです。

『支給開始年齢が68歳や70歳に引き上げられたときのシミュレーションはしてみたのか?』

 そしたら『まだやっていません』と答えました。システムを変えるなら、まず年金財政の将来的な収支をきちんと考え、何通りもシミュレーションをしなければならない。しかし、シミュレーションのための数理計算システムを組むだけで1年以上かかるから、今回それをする時間がなかったのです。

 年金財政に対して何らかの対策をしないといけないと、厚労省はこのたびの支給開始引き上げ案を出したのでしょうが、国民にしてみれば、明日にでも年金財政が破綻するのかと不安に駆られてもおかしくない。

 そもそも、支給開始年齢を引き上げるときには、相当な準備期間が必要なんですよ。今働いている人の老後の生活設計が狂ってくるのですから、資金を貯蓄する時間を与えなくてはならない。60歳から65歳に引き上げることすら、'80年の議論開始から50年かけてやるわけです。明確な根拠も示さず、引き上げスケジュールを前倒ししたり、2年に1歳引き上げるなど、今回の議論は乱暴すぎます。

 その前に、財政状態がこのぐらい悪いから、支給開始年齢を何年に1回、1歳ずつ上げていきましょうという議論があって当たり前です。ところが、そうした議論の過程を全く出さないで、突然、支給開始年齢の引き上げだけを言われても、誰も納得しないでしょう。国民に対して失礼ですし、知恵がなさすぎます」

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