「君はどう考えているの?」
「勉強不足」の記者たち
遅ればせながら、小沢一郎に答える

「三権分立について、君はどう考えているの? ちゃんと勉強して、筋道立てた質問をしてください!!」

10月6日、「陸山会事件」の初公判を終えた後に開かれた記者会見で、共同通信の記者に「(野党の証人喚問要求に応じて)国会でも説明責任を果たす必要があると考えるか」と聞かれた小沢一郎氏は、血管を浮かび上がらせながら、こう怒号を発した。

 小沢氏に逆質問された共同通信記者は、咄嗟のことに反応できず、

「あの・・・国会での説明も・・・・・・一方では重要なことかと思います」

 と返すのが精一杯。小沢氏の傲慢さを曝け出す一方で、政治部記者のふがいなさをも露呈する会見となってしまった。大手新聞社政治部記者が、逆質問に答えられなかった共同通信記者の心情をこう代弁する。

勉強しないと、ボクのような立派な人になれないよ!PHOTO:Getty Images

「小沢さんの逆質問に誰も反論できなかったのは情けない限りですが、あの会見場には異様な緊張感が漂っていたんです。30人も入れば一杯になるような狭い部屋に記者が押し掛け、開始直前に到着した記者は『もう入れないよ!』と追い出されたほどで、報道陣も小沢陣営もピリピリしていましたから。質問する記者の数もあらかじめ決められていたので、共同の記者も慌ててしまったのでしょう」

 ならば、遅ればせながらではあるが、「勉強不足」と言われた彼ら記者たちに、この場で思いっきり反論してもらおうではないか。

 まずは30代の大手新聞社政治部記者の反論。

「三権分立について、小沢さんは『証人喚問など政治的な干渉を行って、裁判所の判断に影響を与えてはいけない』と考えているのでしょうが、陸山会事件が法的にどう判断されるかということとは別に、小沢さんは自らの行動が政治的・道義的に正しいと考えるのかどうかを国会で説明する責任があって、これは三権分立に反しません。小沢さんのほうこそ勉強不足だと思いますね」

 この記者の反論について、憲法学の専門家も「小沢氏の論理には無理がある」と同意する。

「小沢氏は国会を『単なる立法機関』と狭く解釈したのでしょうが、国会の役割のひとつに、『責任追及』も含まれています。証人喚問が政局に利用されてはいけませんが、有罪判決を受けた元秘書に対する監督責任などを、国会が国民に代わって説明を求める、という目的であれば問題ありません。むしろ、与党の幹部が『小沢さんは無罪だ』と訴えている状況のほうが、司法権の独立を脅かす可能性があります」(関西大学政策創造学部教授・孝忠延夫氏)

 小沢氏は会見中、精神的に相当追い込まれていた。だから記者に強く当たって、その気持ちをごまかそうとしたと分析するのは、通信社の30代政治部記者。

「あの会見のとき、小沢さんは計31回も手元のメモを見ながらしゃべっていました。自分の主張が破綻しないように恐る恐る話そうとしている焦りが伝わってきました。そのクセ記者にいちゃもんをつけるときだけは急にエラそうになる。これでは自分はうだつが上がらない平社員なのに、子供には『勉強しろ』と強く当たるダメ親父ですよ」

次は言い返してね

 さらに、「小沢さんが暴論を展開して記者を困惑させるのは、これに始まったことではない」と指摘するのは、テレビ局政治部の40代記者。

「民主党の幹事長を務めていたころ、小沢さんは『天皇と外国要人が会見する際は、1ヵ月前までに宮内庁に申請しなければならない』という1ヵ月ルールを無視して、天皇と中国の習近平国家副主席との会見をごり押ししました。このときも記者に『この特例措置は天皇の政治利用ではないか』と聞かれて、『君は日本国憲法を読んでいるのか!? 憲法をもう一度勉強しなさい!』と記者を恫喝しましたが、これも小沢さんの『天皇の国事行為』に関する誤解があったんです。もし小沢さんに直接モノ言う機会があるなら、『そんなふうに勝手に法律を解釈をしているから、あなたは司法試験に落ちたんじゃないですか』と言ってみたいですね」

 小沢氏の「勉強しろ」発言に、いまさらではあるが不満を爆発させる記者たち。自民党の石破茂前政調会長は、小沢氏のある”功績”に触れながら、小沢理論の愚かさをこう指摘する。

「'85年、衆議院は『政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない』
という『政治倫理綱領』を定めました。小沢さんはこの綱領作成に力を注いだ一人で、『綱領の生みの親だ』と自任していたほどです。その張本人が、自らが疑惑を解明しなければならない立場に立たされた今になって『そんなものは知らない』という態度をとるのには、ほとほと呆れました」

 ただ、一方で石破氏は、あの場でなにも言い返せなかった記者たちにも、こんな苦言を呈する。

「記者の方々が誰も小沢さんに反論しなかったのは残念でした。日ごろから紙面に『国会審議における○○議員の質問は準備不足だ』などとよくお書きになりますが、それなら記者会見などで政治家に質問をするときには、もう少しあなたがたも準備をしたほうがいいのではないですか、と一言言いたくもなります」

 小沢氏の暴論には反論できても、石破氏のこの正論には口をつぐむしかなさそうだ。

『週刊現代』2011年11月5日号より

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