2011.04.14(Thu) 週刊現代

こんな「被曝食品」調査を信用していいのか

取材すればするほど、あまりのズサンさに驚く

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週刊現代

 両方ともそれらしい理由を語るのだが、すでに出荷制限を受けている4県では、ビニールハウス栽培で放射線の影響はほとんどないような野菜も、一律に出荷制限を受けている。東京都の小松菜についても、なぜその1ヵ所だけ規制値を超える放射性物質が出たのか、という疑問への明快な回答はない。

 こうした国の曖昧な出荷制限に、すでに制限を受けている県から批判の声が上がるのは当然だ。現に、橋本昌茨城県知事は、厚労省を訪れた後、

「正直者がバカを見るのはおかしい。検査しない産地の物が(消費者に)選ばれるのは疑問だ」

 と怒りを露にした。

 橋本知事が怒るのも無理はない。茨城県は厚労省から「被曝食品」の検査をするよう通達が出た3月17日以前に、自主的に検査を行っていたのである。他に先駆けて行ったから、国が全面的に検査をしている福島に次いで多い、121品目を検査している。

「国の要請より先に検査を始めたことで、当初は生産者の農協などから『なぜ、茨城だけそんなことをするのか』と不満が寄せられました。しかし、地道に検査を続けた結果、いまでは『安全性を証明したいから、この品目も検査してほしい』と、生産者側から未検査の品目を持ち込んで来ることのほうが増えました。今後も臨機応変に対応し、検査品目を増やしていく予定です」(茨城県農林水産部農政企画課)

 たしかに検査済みの品目が増え、規制値を下回る品目が多くなれば、未検査の品目のほうを避けるという消費者も出てくるだろう。すくなくとも政府は、最初に品目を指定して検査するように指示し、徐々に品目を増やしていくこともできたはずだ。件数も品目も自治体任せでは、住民の健康を考えて、汚染の可能性が高い品目を数多く調べた自治体ほど短期的な不利益を被る。

 風評被害を減らすのに、「安心できないから食べたくない」という消費者心理を、けしからんと怒ったところで意味はない。むしろ、徹底的に食品の放射能汚染がないかを調べ、ここまで調べたのなら大丈夫だと、消費者が納得することが必要だ。そのため、一時的に出荷制限されたとしても農家の損害については賠償し、結果的に売れ行きが元通りになるのも早くなるのではないだろうか。

大根の葉は大丈夫か?

 各地の農協の話を聞いても、風評被害には悩んでいるが、むしろ怒りは国のやり方に向いていた。

「もう群馬県産と名前が付いただけで、まったく売れない。理解できないのは国の暫定基準値とやらで、それまでなかったのに急に作って、それを上回ったらアウトというのは酷すぎる」(群馬県JA高崎本店)

 この「被曝食品」の出荷制限を巡っては、すでに福島県須賀川市の農家で64歳の男性がそれを苦に自殺する事件も起きている。この男性は有機栽培にこだわって米やキャベツなどを作っていたが、3月23日に福島県全域でキャベツの出荷制限が決まった翌日、「これで福島の農産物は売れなくなる」と言い残して首を吊ったという。国が早い段階で規制値と補償を打ち出し、一時的に苦労をかけるが、ある条件になれば制限を解除すると決めておけば、こうした悲劇も未然に防げたはずだ。

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