カルロス・ゴーンは45歳で日産のCEOになった。「70歳まで働ける社会」と「定年70歳」はまったく意味が違う
厚生労働省から企業経営者の高齢化の流れを決定付ける方針が打ち出された

 最近「老害」という言葉を余り聞かなくなった。老人ということば自体が一種の差別語扱いされていることもあるが、高齢者が会社や政府組織の中に居座るケースが増えていることと無関係ではないだろう。

 未曾有の原子力発電所事故の収束に向けて奮闘している東京電力の勝俣恒久会長は71歳の老人だし、やらせメール事件でいったん辞意を表明した後、それを撤回した九州電力の真部利応社長も66歳の高齢者だが、まだまだ社長の椅子にしがみつきたい様子だ。電力以外にも、とっくに年金受給年齢に達していながら、職を離れない上場企業のトップが少なくない。

 欧米では65歳を過ぎた人がCEO(最高経営責任者)をやっている上場企業は、一部のオーナー企業を除いてほとんどない。企業トップの激務に高齢者ではまず体力が持たない。何せ、時差の壁を超えて世界を自ら飛び歩くのが欧米のCEOの仕事だからだ。

 1999年に経営危機が表面化した日産自動車に乗り込んできたカルロス・ゴーン氏は当時45歳。ゴーン効果もあって、日本の社長就任年齢は若返る傾向を見せた。

 ところがこの数年、再び上昇傾向にある。会長・社長が高齢化すれば、当然、役員も高齢化し、部長も高齢化する。日本企業の活力がどんどん失われていっていることと、幹部の高齢化は無関係ではないだろう。

 そんな企業経営者の高齢化の流れを決定付ける方針が厚生労働省から打ち出された。厚生年金の受給年齢の引き上げである。

年金の支給年齢引き上げとワンセット

 現在60歳からの厚生年金の支給開始は、男性の場合、2013年から61歳となり、以降3年ごとに1歳ずつ引き上げられ2025年からは65歳とすることが決まっている。この65歳への引き上げを大幅に前倒しすることや、支給開始を68歳~70歳にさらに引き上げる案が厚労省から社会保障審議会年金部会に示されたのだ。国民からすれば、掛け金を支払い続けたのに突然支払いが延期される「契約不履行」で、猛烈な反発を呼んでいる。

 一見、この年金支給開始年齢の引き上げと、企業経営者の高齢化は関係ないように思われるだろう。だが、支給年齢引き上げに合わせて厚労省は別のルール作りを進めている。

 今年6月に厚労省の「今後の高年齢者雇用に関する研究会」がまとめた報告書では、年金の支給開始年齢の引き上げに伴って、企業に義務付けている定年を現在の60歳から65歳に延ばすよう求めている。

 年金支給開始の引き上げが始まると、無年金・無収入の期間が生じてしまうため、企業にその間の雇用を義務付けようという発想だ。さらに、支給年齢を70歳に引き上げることを視野に、定年の延期や定年制度の廃止を企業に義務付けることを検討している。

 すでに厚労省は「70歳まで働ける企業」をキャッチフレーズに定年の延長や廃止を企業に働きかけている。中小企業に対しては定年を65歳以上に延長したり、制度を廃止した場合、政府が企業に給付金を支払う制度も運用している。

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