共済一元化し「新厚生年金」創設せよ
毎日新聞社「すぐにやるべき課題」を提示[社会保障]

 毎日新聞はこのほど年金改革に関する「緊急4課題」をまとめ発表した(2月24日付朝刊)。会社員らが加入する厚生年金と公務員らが入る共済年金を一元化した「新厚生年金」(仮称)を創設し、無年金・低年金者対策として、「高齢者福祉給付」(同)の新設を検討することなどが柱だ。2008年に公表した、すべての年金を一元化するとした改革案を最終の姿としながらも、より優先すべき課題から着手するよう提言している。

 毎日新聞はこの案を2月26日に首相官邸で開かれた「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)で説明した。

 緊急課題として、

(1)厚生年金と共済年金を一元化した「新厚生年金」創設
(2)パートら非正規雇用者に対する新厚生年金の適用
(3)無年金・低年金者向けに、税による高齢者福祉給付制度の創設
(4)税と社会保障の共通番号導入

---の四つを提示した。

 毎日新聞は08年7月、全ての公的年金を一元化したうえで、現役時代の平均年収が600万円までの人に対し、収入に応じて税財源で最高月額7万円の最低保障年金を給付する改革案を公表している。保険料率を年収の19%(現在の厚生年金は16・058%)で固定し、40年加入した人は生涯の平均所得の40%の年金(加入期間が1年増えるにつれ、1%増加)を支給するフィンランド方式を導入するというものだ。

 しかし、リーマン・ショック後の景気低迷により、税収入が急減する中、年金ばかりでなく、医療、介護の改革、さらには財政再建も急ぐ必要が出てきた。限られた税財源を有効に配分するには、年金改革も優先順位をつけて実施すべきと考え、08年改革案を「すぐに取り組むべき改革」と「将来的な課題」の2段階に分けた。緊急4課題は「すぐに取り組むべき改革」に位置づけ、5年をメドに実現に移す。

 緊急4課題の概要は次の通りだ。

【新厚生年金創設】

 所得把握の難しい自営業者らの国民年金を含めた完全一元化は将来の課題とし、会社員の厚生年金と公務員などの共済年金を一元化する新厚生年金を創設する。

【非正規雇用労働者へ適用】

 国民年金保険料の未納率は、自営業者よりもパートや厚生年金非適用業種の正規労働者といった勤め人の方が高い。こうしたサラリーマン層を新厚生年金に加入させることで未納の解消を図る。これで公的年金加入者の9割をカバーする。保険料を払わず給付を受ける専業主婦ら「第3号被保険者」問題も、パートの主婦らへの新厚生年金適用で解消する。労使折半で保険料を負担するのが苦しい中小企業には税を優遇したり直接税で補助し、後押しをする。

【高齢者福祉給付】

 保険料を払うことができる所得がありながら年金未加入の人と、十分保険料を払えなかったために無年金・低年金となった人を厳密に分け、十分払えなかった人には今の生活保護制度を改編して創設する高齢者福祉給付を支給する。65歳以上の人への生活保護は従来の「就労支援目的」とせず、「生活保障費」としたうえで、老後の生活を支えることが可能な額を保障する。

【共通番号導入】

 未納・未加入を防ぐため、税と社会保障の共通番号を導入し、所得や資産をより正確に把握できるようにする。高所得者、年金額が高い人への課税強化を進めるためにも活用する。自営業者も含めた将来の年金一元化が可能かどうか、共通番号の運用状況をみて判断する。

 以上、緊急4課題の概要を紹介したが、今後25年までの十数年間は75歳以上人口が2倍に増え、最も医療・介護のニーズが高まる期間となる。毎日新聞は、医療と介護に関し、両者の機能分担を明確にして効率化を図りつつ、税財源を優先的に集中させる必要があると考える。

 医療、介護は雇用の受け皿ともなる。就労環境の改善に力を入れることで働く高齢者が増えれば、年金財政も一息つくことができる。また、先進諸国に比べ、極端に少ない子育て関連への公費支出も拡充し、社会保障を支えていく世代を手厚くすることも提言している。

 所要財源に関しては、政府の各種試算を参考として25年までの社会保障全体で必要となる額を算出する。消費税を基本としながらも、相続税など所得・資産課税の見直しも進め、社会保障費に充てる。

 政府の集中検討会議には毎日新聞の他にも、朝日、読売、日本経済、産経の各紙がそれぞれの年金改革案などを提出した。

 日経は基礎年金を全額税で賄う「税方式」を主張したが、毎日を含む他の4紙は、保険料負担に見合う給付をする現行の「社会保険方式」を維持すべき、とした。税方式には大幅増税が必要で、医療、介護に必要な財源をねん出できない、などが主な理由だ。一方、日経は「税方式導入で、未納率が高まって不安定になっている現行制度を改善できる」と主張している。

 また、厚生、共済両年金の一元化には大筋で全紙が賛同している。このほか、読売は税で月5万円の最低保障年金を支給する案を示し、産経は高額給付者の基礎年金を減額して老後の生活に困っている人の給付に充てる「自立応援年金制度」(仮称)を提案した。

大震災で議論が当面進まず

 菅直人首相は「税と社会保障の一体改革」を掲げ、野党に対し超党派協議を呼びかけている。4月に社会保障制度の基本改革案をまとめたうえで、6月には消費税率の引き上げ幅も含めた一体改革案を公表する意向だ。

 今後の焦点は年金改革案の修正内容になる。民主党はこれまで国民年金を含めた「完全一元化」を主張してきたが、菅政権の求心力低下に伴って野党に秋波を送らざるを得なくなり、態度を軟化させ始めた。自民党などが主張する厚生・共済両年金の一元化案を受け入れる可能性はある。また、無年金・低年金対策として「税による補足給付導入」という一点で与野党が折れ合う余地は残っている。

 現時点で与野党協議の環境はまったく整っていない。民主党内にも小沢一郎元代表に近い勢力を中心に、党独自案の修正に難色を示す議員もおり一体改革の行方は混とんとしている。

 しかも、東日本大震災の影響で、政府、与野党とも当面は落ち着いた議論ができない状況になった。

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