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 ギリシャのデフォルトがいよいよ秒読み段階に入ってきた。ギリシャ国債はほぼ毎月、償還期限を迎えるが、そのたびにギリギリのタイミングで「追い貸し」が行われてきたので、どうにか債務不履行を免れてきた。ギリシャは生命維持装置を付けられた瀕死の患者であり、それが外されれば、即刻アウトだ。

 誰もババを引きたくないが、「その時」は確実に近づいている。ではその場合、日本経済にどのような影響があるのだろうか。

 初めに直接的な影響が及ぶのは金融機関だ。日本の大手金融機関は、財政悪化が深刻化しているPIIGS諸国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の国債を総額約1兆円分保有しているが、最も多額の三菱UFJフィナンシャル・グループで約3400億円。自己資本の3%程度にすぎない。

 また、破綻必至なのはギリシャだけで、日本の金融機関が保有するギリシャ国債は総額でも1300億円程度だ。ギリシャの破綻で金融市場に不安心理が蔓延し、ポルトガル国債などが下落することはあるだろうが、そうした最悪の事態を考慮しても、日本の金融機関の健全性が大きく損なわれることはない---これが日本の金融当局や金融機関の表向きの説明だ。

 だが、こんな話はまるで鵜呑みにできない。'07年に米サブプライムローンが焦げ付いたとき、奥正之全銀協会長(三井住友銀行頭取=当時)は、「日本の金融機関への影響は限定的」と言っていたが、大手金融機関は結果的に1兆円を超える損失を被った。'08年のリーマン・ショックの際にも与謝野馨経済財政担当相は「蜂が刺した程度」と楽観論を振りまいたが、日本経済は震源地の米国よりも深刻な打撃を受けた。今回も巨額損失を被る可能性は捨てきれない。

 では実体経済への影響はどうか。リーマン・ショックの際の債務総額は約60兆円。それに対してギリシャ国債は約30兆円だが、国債がデフォルトすれば民間債もデフォルトする可能性が高く、そうした関連債務も含めればリーマン・ショックと同様の規模になるだろう。そして、それらの債権のうち約半分はフランスやドイツなどギリシャ以外の国の金融機関が保有しており、それらの自己資本はあまり厚くない。そのため、ギリシャの破綻は即座にEUの金融収縮につながり、実体経済でも大混乱が起こる。現象面でもリーマン・ショックが再現されることはほぼ確実なのだ。

 ヨーロッパ経済に実体的な被害が及べば、円高・デフレに加えて震災ショックに喘ぐ日本経済にも悪影響が及ぶ。さしあたり、外需が大きく落ち込み、日本のエクセレントカンパニーは大打撃を受ける。それが国内全体に波及していく。

 リーマン・ショック以降、円高が加速し為替は1ドル=110円台から80円を大きく切る水準にまで割り込んでいる。株価は1万3000円台から7000円台まで落ち込み、いまでも9000円に届かない。この円高下にギリシャ・ショックが襲えば、株価は5000円台まで落ちても不思議ではない。さらなる円高も十分にあり得るだろう。そうなったら、日本の輸出産業は壊滅的になり、株価も5000円を割る事態に直面するかもしれない。

 いずれにせよ、まずは株価暴落という形で日本経済への影響が表れ、消費低迷、デフレ深刻化、失業増加とつながっていくだろう。

 ギリシャの破綻は決して遠い国の出来事ではない。楽観論は禁物だ。

「週刊現代」2011年11月5日号より


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