米クラウド業界をふたたび探訪する(4)
ブロックバスターを潰した米国流マネーゲーム

〔PHOTO〕gettyimages

 4月6日水曜日(米東部時間)、ニューヨーク連邦破産裁判所はブロックバスター・ビデオの資産売却オークションを終了した。昨年9月に会社更生法を申請した同社は、全盛期1万店を越える巨大ビデオ・レンタル・チェーンとして君臨した。しかし「いつでも、どこでも、好きなビデオをみたい・・・」そんな消費者の要望に背を向けた巨大ビデオ・チェーンは、たった3億2,000万ドル(約270億円)で衛星放送大手のディッシュ・ネットワークに落札された。その惨めな価格は、クラウド時代に取り残された同社を象徴している。

破綻の引き金は米国流マネーゲーム

 ブロックバスター・ビデオ(Blockbuster Inc.) *1は、1985年にテキサス州ダラスで創業された。同社の成功は「徹底した店舗別カスタマイズ」にあった。地域ごとに違う利用者ニーズを的確に把握し、巨大物流センターを軸に各店舗に応じたビデオ・タイトルを毎日きめ細やかに供給した。地域に合った品揃えと無駄のない在庫管理。その手法は、セブン・イレブンなどのコンビニエンス・ストアーと一致している。

 また、1987年には米国任天堂との裁判で勝利し、ビデオ・ゲーム・レンタル市場を切り開いた。その後、店舗営業時間の延長や競合他社の買収、成人ビデオの撤廃などを続け、ブロックバスター・ビデオは急成長を続けた。

 しかし、ビデオ・レンタル業界で急成長を続ける同社は、米国流マネーゲームの標的にされる。

 1994年 *2、ブロックバスター・ビデオは、バイアコム(Viacom Inc.)に84億ドル(約7,200億円)で買収される。バイアコムは、ウォルト・ディズニーおよびタイム・ワーナーに次ぐ米国メディア・コングロマリットの大手。傘下には、音楽専門チャンネルのMTVネットワークや映画スタジオのパラマウント・ピクチャーズ(Paramount Pictures Corp.) *3、4大テレビ局のCBSなどが顔をそろえている。

 1990年代後半、米国のメディア大手は買収合併による規模の拡大と垂直統合を進めた。バイアコムも、この流れに乗ってブロックバスターを買収し、ビデオ・レンタルへの垂直統合を展開した。

*1 同社の正式社名はBlockbuster ,Inc.。しかし一般には、ブロックバスターやブロックバスター・ビデオなどの商標名で親しまれている。本稿では商標のブロックバスター・ビデオを使う。なお、会社名は1996年にBlockbuster Entertainment CorporationからBlockbuster ,Inc.に変わっている。
*2 買収提案は1993年から始まり、両社が合意に至ったのは1994年。
*3 バイアコムのサムナー・レッドストーン会長は、1994年にブロックバスターとパラマウント・ピクチャーの買収を平行しておこなっている。バイアコムは相次ぐ買収で資金調達に追われ、パラマウントの資産であるマジソン・スクエアー・ガーデンやパラマウント出版、パラマウントの音楽部門などの売却先探した。また、米4銀行団と68億ドルにのぼるリファイナンスをおこなったりしている。

 しかし、その影では、郵便を使った無店舗レンタルを展開するネットフリックス(Netflix)社が登場し、2000年あたりから徐々に勢力を伸ばしてゆく。そして2004年頃には、固定コストがかさむビデオ・レンタルショップ業界を脅かすようになる。そうした時代の変化を感じたバイアコムの総帥サムナー・レッドストーン(Sumner M. Redstone)会長 *4は、2004年にブロックバスターを分社独立させた。

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