成立機運に湧く「郵政法案」の落とし穴ーー
「世襲の公務員」特定局利権」を守ったまま上場できるのか

〔PHOTO〕gettyimages

 小泉民営化が失敗に終わり、埃をかぶっていた郵政改革法案について、与野党の間に、政権交代以来、初めて、協力して審議しようという機運が出てきた。

 復興増税を前にして、政府保有の日本郵政株を売却する道を整えて税外収入を増やし、国民の負担を軽減しようというのである。

 その考え方自体は公益にかなうものだし、そもそも筆者が当初から主張してきた内容だけにおおいに歓迎したい。

 しかし、現行の改正法案には大きな落とし穴がある。郵便に限られていたユニバーサルサービス義務(全国で広くあまねくサービスを提供する義務)を郵便貯金や簡易保険にも拡大しようという点だ。地方の活性化という表向きの理由と異なり、その本当の目的は、かつて「世襲の公務員制度」と揶揄された特定郵便局制度を末永く温存しようとすることにある。結果として、上場や政府保有株の売却の足かせになりかねない規定なのだ。

 このユニバーサルサービス義務の拡大問題は、20日から始まった特別国会の審議日程の短さを上回る、深刻かつ本質的な問題だ。与野党が怨念を乗り超えて、建設的な修正案を構築できるかどうか、永田町の真価が問われている。

引き伸ばしを狙った国民新党がA級戦犯

 国営時代から日本郵政が全国展開してきた「かんぽの宿」の叩き売り問題に端を発し、元三井住友銀行頭取の西川善文氏が事実上の解任処分を受けてから、はや2年。

 与野党の間には、未曾有の天災となった東日本大震災からの復興の一助とするために、今回の特別国会で、埃をかぶっていた郵政改革法案の審議を始めようというムードが盛り上がっている。

 その最大の功労者は、野田佳彦総理だ。民主党の代表選に勝利を収めた直後の8月30日、組閣に先立ち、連立与党の党首会談を開催。国民新党の亀井静香代表との間で合意文書を交わし、この中で「郵政改革法案について、各党との修正協議の上で合意を図り、臨時国会での成立を期す」との言質を取り付けたことが転機になったのだ。

 振り返れば、あの歴史的な政権交代の直後に、郵政改革問題を暗礁に乗り上げさせたA級戦犯をあげるとすれば、それは亀井氏率いる国民新党である。

 一昨年の総選挙に勝利を収めた時点では、連立与党は参議院でも過半数を維持していたので、必要最小限の郵政改革を法案にまとめておけば、実現は容易だったのに、その機を逸したからだ。

 当時、総務政務官に就いた同党の長谷川憲正参議院議員(当時)を中心に、国民新党はわざわざ「郵政改革が実現するまでの間、政府保有株の売却を凍結する」という問題引き延ばしの法案を提出する策に出た。

 同党の狙いは、はっきりしていた。国民新党を支援しないと本チャンの抜本改革は実現しないという環境を作り出して、日本郵政や全国郵便局長会(旧全国特定郵便局長会)を自らの集票マシーンに仕立て上げることだったのである。

 そして、その後、特定郵便局制度を存続させるための奇策を盛り込んだ法案を策定し、一言一句とて修正させないとの頑なな姿勢を採ってきた。これは、田中角栄・元首相が率いた旧田中派や、竹下登、金丸信、小渕恵三、野中広務氏らが君臨した経世会、そして西川善文氏の一派に代わって、新たな郵政の私物化が始まることを意味していた。

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