国家的詐欺だ やらずボッタクリ
「支給は70歳から」なら、もう年金制度はやめろ!

何歳になってももらえない

 厚生労働省はついに「年金支給は70歳から」とする案を正式に示した。11日の社会保障審議会の年金部会で、厚生年金の支給開始年齢を68~70歳に引き上げ、その際の具体的スケジュールも提示したのである。元厚生省年金局数理課長の坪野剛司氏が語る。

「実は、私が厚生省にいた'80年代当時から、年金支給開始年齢を67歳ぐらいまで引き上げざるを得ないという議論はしてきました。ただ言いたいのは、制度を改正するならば、まず年金財政の将来的な収支をきちんと考え、シミュレーションを十数通りしながら時間をかけて議論し、70歳に上げる明確な理由をはっきり示すべきだということです。今回厚労省はそうした手続きや年金財政の見通しをまるで出さぬまま、『まず制度改革ありき』で改革案を提示した。これでは国民が納得しませんよ。支給開始年齢を『3年に1歳』ではなく『2年に1歳』ずつ引き上げる案もありますから、年をいくら重ねても年金がもらえない世代も出てきかねない。馬の眼前に人参をぶら下げて走らせているようなものですよ」

 まさに、何も与えず人から取り上げるだけの〝やらずボッタクリ〟だ。周知のように、厚生年金の支給開始年齢は現在60歳だが、再来年から1歳上がって61歳となる。以後、3年ごとに1歳ずつ上がり、2025年度には基礎年金(国民年金)と同じく、支給は65歳からとなることがすでに決まっている。この支給開始年齢をさらに遅らせたり、年齢引き上げのペースを速めたりする具体的な案は次の3つだ(年齢引き上げは68歳の場合)。

1.支給開始は65歳からとするが、3年に1歳ずつ支給開始年齢を引き上げるペースを2年に1歳と速める。

2.現在の3年に1歳引き上げるペースは維持しつつ、支給開始を68歳まで遅らせる。

3.2年に1歳ずつ支給開始年齢を引き上げ、最終的に68歳からの支給とする。

 1の案が採用されれば、現行の制度では63歳になると年金がもらえるはずの54歳('57年生まれ)より若い男性は皆、65歳になるまで支給がお預けとなる。

 また、2の案だと現在44歳以下の男性が68歳支給の対象となり、3の案が採用されれば、現在51歳の男性も、68歳になるまで年金が支給されなくなる。

 今回の支給年齢引き上げの唐突なニュースは、厚労省が提示するのに先んじてNHKで報道された。それも、厚労省の策略である。

「『年金財政は苦しいんです。自分たちはこんなに考えています』と訴えたいがために、厚労省は支給開始年齢引き上げの議論をNHKに報道させた。国民に『支給開始の引き上げは仕方がないことなんだ』と思わせる狙いがあって、これはもう〝脅し〟でしかありません」(年金評論家で社会保険労務士の田中章二氏)

 大メディアに報道させ、国民の反応を見ながら、既成事実を積み上げて落としどころを探っていくのは官僚の常套手段である。そして気づいたころには、国民は外堀を埋められ、お上の命令に従わざるを得なくなる。これは国家的詐欺といっても過言ではない。

「10年前から平均寿命はそれほど変わっていないし、出生率はむしろ上がっている。世界経済の停滞こそが、年金財政を悪化させている原因です。株式はもちろん債券などに、現時点で厚労省が想定している利回りを確保できるような年金積立金の運用先がないんです」(前出・坪野氏)

 10/24公開『緊急特集 ヨーロッパ発「世界大恐慌」の可能性高まる世界経済「第2のリーマンショック」』の記事で明らかなように、欧州危機でユーロ安が進行し、外債や株での運用は今後もしばらく厳しい局面が続くと見られる。金融マーケットが現在以上に悪化すれば、支給開始は68歳ではなく70歳からにせざるを得ない。

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