戦後最大の「国難」 東日本大震災
国、自治体、地域、NPO、総力で立ち向かう

「復興庁」創設を検討 急がれる自治体機能復活
堤防を超えて海浜のまちを襲った大津波=岩手県宮古市閉伊川河口付近で3月11日午後3時21分

戦後最大の「国難」 東日本大震災
空前の巨大津波 原発災害の恐怖・・・
国、自治体、地域、NPO、総力で立ち向かう

 3月11日に発生した東日本大震災は、世界最大級のマグニチュード9・0の大地震と巨大津波が東北から関東地方の太平洋地域に甚大な被害をもたらし、東京電力福島第1原子力発電所にも損傷を与え、原発災害を引き起こした。日本の政治と経済は発生の瞬間から一変。政府や自治体ばかりでなく地域住民、NPO、世界からの支援も含め「未曽有の国難」(菅直人首相)に総力で立ち向かわなければならない事態が続いている。

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 政府は11日の大震災発生直後に「緊急災害対策本部」(本部長・菅首相)、17日に「被災者生活支援特別対策本部」(本部長・松本龍防災担当相)、22日に「被災者生活支援各府省連絡会議」(議長・松本防災相)を設置し、政府中枢の体制を作った。

 府省連絡会議は、震災の情報を各府省で共有・一元化して被災地ニーズに的確に応えていくために官僚組織をフルに活用する狙いがある。事務次官クラスが出席し迅速な意思決定と実施を図る。被災地の本格的な復旧と復興のために司令塔を担う「復興庁」を創設することも検討が始まった。

 今回の震災は、大地震とそれに伴う巨大な津波による被害に加えて、原発が被災し原子炉溶融と大量の放射性物質の漏出という事態に至った。このため、菅首相の指示で自衛隊が総員(22万9000人)の半数近い10万人態勢の災害出動を行い、救出や救援、物資輸送などにあたった。原発災害への対処には、自衛隊と東京消防庁をはじめ全国の消防組織、警察組織が総力を挙げている。

 被災地が東北地方から関東地方に至る広域に及んだのも今回の震災の特徴だ。市役所や町役場なども被災し、町長が死亡した岩手県大槌町をはじめ職員が犠牲になった自治体も多く行政機能に重大が支障を来している。直前に控えた首長・議員選が行える状態にないため、岩手、宮城、福島の3県59市町村(70選挙)のうち3県48市町村(58選挙)で選挙を当面延期されることになった。

 被災地支援の現場の中核機能を担う自治体機能の回復が急務で、総務省や都道府県の含めた行政職員の長期的な応援体制が重要になる。

津波で崩された原発「安全神話」

 東日本大震災で発生した巨大津波が、何重もの障壁で放射能を閉じ込めるという設計思想を持った日本の原子力発電所の「安全神話」を覆した。日本の基幹エネルギーである電力を直撃した。

上空から撮影した福島第1原発3号機=3月16日、東京電力撮影のビデオから

 福島第1原発では、炉心過熱と燃料棒の一部溶融、原子炉建屋の爆発、それに伴う高レベル放射性物質の放出、使用済み核燃料プールの沸騰などが同時多発的に発生し、「世界一安全」をうたってきた日本の原発のもろさが露呈した。現場では、東京消防庁や自衛隊などが出動した重要施設の冷却作業と、命綱の電源復活に向けた東電の作業などが強い放射線にさらされながらの緊迫した状況下で続けられた。

 福島第1原発の地元の福島県大熊町の揺れ震度6弱。6基の原子炉のうち、運転中だった1~3号機は直ちに自動停止した。経済産業省原子力安全・保安院によると、第1原発周辺で14メートル以上の津波が押し寄せた可能性があるとされる。設計時に想定した津波の高さの約3倍で、津波が原発の安全の根幹にかかわる原子炉の冷却機能を喪失させた。

 今回、同原発では、3号機を襲った東西方向の揺れの強さが507ガル(ガルは加速度の単位)と保安院が耐震安全の基準値として認めた数値の1・15倍だったのを除き、各号機とも揺れはおおむね基準値を下回った。しかし、敷地内にある原発に送電するための鉄塔が倒壊。さらに津波の影響で、原子炉を冷やすための緊急炉心冷却装置(ECCS)を駆動する非常用電源が6号機を除いて使えなくなり、外部からの受電設備も水没し事態を悪化させたとみられる。

 原発は一つのトラブルがあっても、別の仕組みで補い、高レベル放射性物質が外部に漏れる最悪の事態を回避する「多重防護」の考え方で設計されている。だが今回は、停電を補うはずの非常用発電機が津波の被害で機能しなかった。電源喪失で原子炉や使用済み核燃料プールの冷却が不十分になり、一連のトラブルの連鎖を招くことになった。災害直後に東電の小森明生常務(原発担当)は「10メートル以上の津波は想定していなかった」と述べた。

 地震発生時に運転中だったのは1~3号機で、核燃料の冷却にはとりわけ注意が必要だった。しかし1号機で14日、格納容器の圧力計が故障。2号機と3号機では14~15日、格納容器を減圧する圧力抑制プールの圧力計が故障した。

 その後、1~3号機の原子炉内に消防ポンプ車で注水したが、水位上昇の兆しが見られなかった。圧力容器から水漏れしている可能性と、内部の圧力が高すぎて外部から水を入れられない可能性に加えて、災害直後は「水位計が正しい値を示していない可能性がある」(原子力安全・保安院)という見方もあった。

 1~4号機の使用済み核燃料プールでは、水を冷やすための海水ポンプが使えず、水温計も16日までにすべて故障して水温が監視できなくなり、3、4号機の核燃料プールは一時、沸騰する事態になった。

 加えて、計器を監視する中央制御室の放射線量が高過ぎるため、運転員が常駐できない状態にも追い込まれた。室内の放射能測定値を伝送するシステムも機能しないため、運転員は線量計を携帯し、定期的に直接機器を読み取りに行かざるを得なかった。東電は「バッテリーの出力が弱く、しっかり計器をコントロールできていない。現在動いている計器も、値にどれほど信頼性があるか分からない」と説明した。

 政府と東電による対策統合本部が設けられ、3号機の核燃料プールの冷却や4号機の冷却のために、陸からの放水が継続して行われた。東電関係者、原子炉メーカー、自衛隊、東京消防庁、警視庁など、原発の暴走を止めるために数百人が動員され電源確保の作業も進められた。放射線量が高いため作業員は顔面をすべて覆うマスクや特殊な防護服を着用。線量計で累積被ばく量を計測しながら交代での作業となり、時間との闘いが続けられた。

 24日には3号機で電力復旧作業中だった3人が被ばくし、そのうち2人が病院に搬送される事故が起きた。高濃度の放射性物質の漏出が起こり、復旧作業がさらに滞った。

 専門家によると、放射線の種類には、すぐにエネルギーを失ってしまい透過力が弱く紙1枚で遮断できるアルファ線、薄いアルミなどの金属板で遮断できるベータ線、物質を透過する力が大きく被曝すると外部からでも体の奥深くまで到達するガンマ線、核分裂の時に発生する中性子からできている中性子線がある。

 ガンマ線はコンクリートの壁や鉛の板で遮断することができるが、中性子線は遮断できず 99年の茨城県東海村の核燃料施設における臨界事故では、この中性子線が大きな被害をもたらした。今回の福島第1原発の事故では主にガンマ線の被曝が問題になっている。

 日本の原子力発電は、66年に日本原子力発電の東海発電所が日本で初の営業運転を開始した。70年代に2度の石油ショックを経験した日本は、石油への依存を減らす目的でエネルギーの多様化を進め、石油に代わるエネルギーとして、原子力や天然ガスの割合が増えた。10年3月現在、商業用の原発は54基、合計出力4884・7万キロワットで全電力の約30%を占めている。

 世界の主要国と比較すると、原発の数はアメリカ(稼働104基)、フランス(同59基)に次いで世界第3位。総発電量に占める原子力の割合をみると、日本はフランス(77・1%)、韓国(34・1%)に次いで高い。

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