2011.10.25(Tue)

「日本人は何を食べてきたか」第1回 織田信長
こんにゃくまで赤く? ド派手信長伝説

筆者プロフィール&コラム概要

「はっ、しかしまだ飯が・・・」

「何をのんびり喰っておる。1秒でかきこめ!」

 なあんて光景があったかもしれない。早食いの信長につきあって胃を悪くした家来、推定100名。

 戦国大名の食事は多くは米が主食、おかずは野菜、魚貝が中心。日持ちするよう魚貝は干物が中心で、これを焼いて食べたと思われる。狩りをした場合鴨、鴫、鶉など野鳥の肉が加わることもあったという。質素だが健康食である。

戦場食は湯漬けめし さらさらっ、いざ出陣!!

 信長は、ではいったい何を食べていたのか? 史料上での最多登場は「湯漬けめし」。ご飯にお湯をかけた、今でいうお茶漬けのようなもの。さらさらっと食べては戦いに向かう。信長の「おかず」ははっきりしないのだが、徳川家康の場合は「味噌をおかずに湯漬け飯を食べた」という記録が残っている。同じように信長も、せ味噌か漬物あたりをおかずに素早く胃袋に収めたに違いない。

 信長は食べ物にこだわらないものの、田舎風の濃い味を好んだと言われる。

 こんな逸話が残っている。ある時、滅亡させた敵方のお抱え料理人を捕え、試しに料理を作らせることになった。この敵方・三好家は京都滞在が長く、この料理人も美味なる京料理が作れると期待したのだ。まずいものを出したら殺される、料理人はまさに命をかけて作ったのだが---。

「まずい。料理人を切り捨て!」

 信長の言葉に青くなり、土下座する料理人。なんとか、もう一度だけチャンスをもらう。翌日料理人が作ったのは、何らかの情報を得たのか、上品な京風ではなく塩味のきつい料理だった。

「うまいっ」

 信長はいたく気に入り、事なきをえたのだとか。

 塩味のきつい料理を、ろくに噛みもせずかきこみ、すぐに戦いに出る。しかも性格は、まれに見る短気! 信長さま、たいへん不健康そう。けれど、「これぞ信長っ」と、手を叩きたくなる豪快な記録ではありませんか。

 その、彩りの少ない信長の食人生のなかで、おそらく珍事ともいえる記録が残る。

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