シリーズ 2020年の世界から見た2011年の日本1
~少子高齢化分野で「課題先進国」の賞味期限はあと5年~

文:久野雅志、吉川尚宏

 日ごろ、我々は、やれ再生可能エネルギーだ、やれTPPだと、マスメディアでその都度とりあげられる話題に翻弄されている。しかし、10年後の日本を考えた場合に、本当に重要な制度や政策は何なのだろうか。仮に2020年にカメラを置くことができたとすると、2011年の日本はどのように見えるのだろうか。本稿ではさまざまなデータをみながら、現在の日本の政策課題を見直してみたい。1回目は高齢化問題である。

高齢化を逆手にとる「課題先進国」アプローチの賞味期限はあと5年

 「課題先進国」とは東京大学の総長であった小宮山宏氏が名づけた言葉である。すなわち、現在の日本の姿は未来の地球の姿であり、日本が抱える現在の課題は、未来の世界が抱える課題であるとの認識をもてば、日本は世界に対して課題解決のソリューションを提供できる、というものである。政府も平成20年版通商白書において「我が国はアジアの課題先進国であり、その解決に先導的に取り組み、その中で培った技術や社会システムを広く地域に展開する」と位置付け、日本の先進的な技術により、世界に先駆けて課題を解決し、そのソリューションを輸出していくという「課題先進国」という概念を強調している。

 災い転じて福をなす、というような発想は我々に希望を与えるものであるが、実は「課題先進国」でいられる時間はそうは長くない。近隣のアジア諸国に目を向けると、高齢化が急速に進展しており、アジア各国も今後順次日本と同程度の高齢化の水準に達すると見込まれているのである。

(表参照)

 香港の合計特殊出生率は1.04(2009年時点)と著しく低く、2015年頃には日本と同様に高齢化率が21%を超える超高齢社会になると見込まれている。また隣国の韓国も、合計特殊出生率は1.15(2009年時点)と日本と比べ大幅に低い水準のため、今後日本を上回るスピードで急激な高齢化が進行すると見込まれ、2025年頃には超高齢社会になると見込まれている。また、現時点では経済発展著しい中国においても、1979年から始まった一人っ子政策の影響により、若年層の数が著しく少なくなっており、急激な高齢化が進行すると見込まれ、韓国と同様に2025年頃には超高齢社会になると見込まれている。またシンガポールやタイなどにおいても同様の状況である。

 このように2015年頃には香港が超高齢社会になり、2025年頃には中国・韓国という近隣の主要国家が超高齢社会になるということで、それまでに高齢化に関する諸課題の解決が出来れば日本にとって大きな機会になる一方で、この5~15年の間に課題解決ができなければ、近隣のアジア諸国と同じ土俵に立つことになる。

 その影響は二つの形で現れるだろう。

1.人材獲得競争の激化
各国とも労働力が不足し、高度人材のみならず単純労働者も含め、人材争奪競争が起こるであろう。

2.「課題先進国」ソリューションの提供競争激化
アジア各国の高齢化のスピードは他の新興国よりも速い。アジア各国は日本同様、「課題先進国」的なアプローチでソリューションを開発し、それをインドやブラジルなどの新興国に提供していくであろう。

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