大震災復興は「政府の資金」より「善意の資金」の仕組みを

気鋭の経済ジャーナリストが新連載スタート! 
震災復興の財源として増税を実現するための大連立も囁かれる 【PHOTO】Bloomberg via Getty Images

 東日本大震災の復興に使う資金の財源をどうするのか、震災直後から様々な声が挙っている。真っ先に発言したのが自民党の谷垣禎一総裁。菅直人首相との会談で、「臨時増税」の時限立法制定について自民・民主の両党幹事長が協議することを確認した、と震災2日後の13日の記者会見で明らかにした。

 次いで声を上げたのが大和総研理事長の武藤敏郎氏。18日に「復興連帯税」の創設を提言。消費税を引き上げることで財源確保が可能だとした。また、中央大法科大学院教授の森信茂樹氏も、統一後のドイツが所得税と法人税に付加税として税率7・5%を上乗せして、年1・8兆円を捻出した例を引き、付加税の導入を提唱した。

 いわば「増税派」だが、谷垣氏は財務大臣も務めた財務省シンパ、武藤氏は元財務次官、森信氏も東京税関長を務めた元財務官僚だ。財務省は震災前から国の財政規律を立て直すためには増税が不可欠という立場であることは周知の通りだ。

 もちろん、このタイミングでの増税には反発が強い。竹中平蔵氏は「菅政権は、経済のダメージを受けたこの時期に、本気で増税する気らしい。経済学のイロハに反する」と真っ向から批判。嘉悦大学教授の高橋洋一氏らは、増税ではなく、10~20兆円の国債を発行して日銀がそれを直接引き受けすべきだとしている。

 増税か、国債発行か。明らかに震災前からの議論を引きずっているが、もう1つ重要な論点がある。国民から集めた資金が本当に援助を必要としている被災者の役に立ち、地域の復興に結びつくか、である。

 仮に復興財源を理由として消費税に1~2%を上乗せしたとしよう。果たしてそれが復興に限った目的税にできるのか。目的税と言った場合、何をもって「復興事業」とするのか。増税しても官僚機構のムダの拡大や、不要不急な公共事業に資金が回ってしまうのではないか。国民は不信を抱いているのではないだろうか。

 民主党への政権交代以降、国家予算の財源は、国債による調達額が税収を上回る状態が2年連続で続いている。戦後の混乱期だった昭和22年度(1947年度)以来の異常事態とされる。戦費調達など国の放漫な支出のツケと説明する向きもあるが、戦争中は国債発行額よりも税収が多かった。

 戦後はなぜ税収を増やせなかったのか。ひとつの仮説は「国への信頼感」だろう。何とか国を支えなければならないと国民が思えば、増税に応じる。だが国が信頼を失えば、政府の増税案は悉く国民に拒絶される。この仮説に従えば、今は敗戦で政府の信頼が地に落ちた戦後以来の、政府への不信感が渦巻いていると考えるのではないか。

 だとすると、東日本大震災という未曾有事態に直面したからと言って、そう簡単には増税することができないのではないか。

「ふるさと納税」の活用も

 一方で、個人の善意である義援金の総額は震災後3週間の間に日本赤十字社と中央共同募金会に寄せられたものだけでも1154億円に上っている。今後届けられる海外からの義援金なども、かなりの金額にのぼり、最終的には数千億円単位になりそうな勢いだ。直接、被災者に届けられる義援金には、国民の大きな善意が寄せられているのだ。

 こうした国民の善意を復興財源に生かすにはどうするべきか。中長期的に見れば、広く国民に負担を求めざるを得ないのは明らかだ。国債発行にせよ、いずれはその償還財源が必要になる。経済が混乱を極めている今すぐにではないにせよ、増税は避けて通れないだろう。

 だがその際には、明確に復興に向けてのビジョンを示し、何にいくらの資金が必要になるかを明らかにしたうえで、資金負担を求めねば、国民は簡単には政府を信用しないだろう。上乗せ税率分の復興財源への目的税化は最低限必要だ。もちろん、その前にもう一度、徹底したムダの排除に取り組むべきなのは言うまでもない。

 いずれにせよ増税論議には時間が必要だ。その間の財源をどう確保していくか。無利子復興国債など「善意」に頼る資金調達方法に知恵を出すべきだ。また、ふるさと納税制度を大幅に拡充し、被災していない自治体の住民が、自らの意思で被災した自治体に税金をシフトさせることも可能だろう。

 現行制度でもわずかな自己負担で税金をシフトさせることが可能だ。静岡県が作っている「自己負担額が5,000円以内となる寄附額の目安」は参考になる。年収600万円の人は3万円、年収1000万円だと8万2000円、年収1億円なら181万円まで、実質的な自己負担5000円以下で、被災地の自治体に寄付できる。

 国民の善意を生かす方法で、必要なところへ必要な支援が行く方策を採っていくべきだろう。
 

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら