安藤隆春・警察庁長官
突如「退任」で
大喜びした芸能関係者

 紳助事件の発端を作った男—安藤隆春・警察庁長官が、突如辞任するという一報が流れたのは、10月12日の午後だった。

「メディア各社はまったく予想していませんでした。ある社は『なんらかのスキャンダルがあったのではないか』と取材に走り、別の社は『安藤長官が突如死亡した』という線で動いていた。警察庁のあるキャリアは『死んでません! 死んでません!』と連呼していましたよ(笑)」(警察庁担当記者)

 安藤長官は、'09年6月の就任以来2年3ヵ月にわたって在職し、山口組・弘道会をはじめとする暴力団の取り締まり・摘発を陣頭指揮した。10月1日から東京でも暴力団排除条例が施行され、この「武器」を使ってまさにこれから暴力団や関連団体・シンパの摘発に本腰を入れようという矢先の突然の辞任だった。

 安藤長官は、11日に後任となる片桐裕・警察庁次長に辞意を伝えたという。

 翌12日に庁内や記者クラブに伝達されたが、14日に閣議で辞任が承認されるまでは報道しないという「縛り」をかけられていた。17日付で正式に辞任、同日安藤長官が会見することになる。

「警察庁長官の任期は通常1~2年。安藤長官は今年6月で満2年を超え、いったんは今春に退任することが確実視されていましたが、留任。任期3年目を迎えていました。

 異例の留任をした理由は、昨年11月に逮捕された山口組ナンバー2の髙山清司若頭の取り調べが佳境を迎えていたことに加え、4月には山口組トップの司忍組長の出所が予想されるなど暴力団捜査の重要案件が重なっていたんです。

 さらに3月11日に東日本大震災が発生、対応に追われたうえ、夏には菅直人首相の退陣が確定的になった。退任時期を逸する形になっていたんですが、その間に警察官僚の人事が停滞し、一部の幹部は定年も迫ってきた。キャリアの一部には、安藤長官が居座り続けることに、密かな不満が溜まっていたんです」(全国紙社会部デスク)

「紳助引退」を花道に退任

 しかし、8月に島田紳助が暴力団との交際を認めて自ら引退。安藤長官は暴力団対策で大物芸能人を引退させるという目に見える成果を挙げた形になった。10月には、暴力団排除条例も全国で施行された。

「山口組撲滅を繰り返し会見で強調していた安藤長官にとっては、紳助を引退に追い込んだことで暴力団取り締まりに一定の成果を挙げ、退任の花道ができた。暴排条例が施行されたこのタイミングで勇退を決断したんでしょう」(前出・社会部デスク)

 紳助引退以降、芸能界と暴力団の黒い交際にスポットライトが当たり、警察の「次の一手」に社会的な注目が集まっていたが、安藤長官はいわば「勝ち逃げ」の格好になった。

 一方、喜んでいるのが芸能界関係者だ。

「辞任の一報はメディアで報じられる以前に聞きました。情報はテレビ局などから、芸能界にあっという間に流れていますよ。

 私たちは一日署長にタレントを出したり、所轄の警察とは以前から協力関係にあります。確かに最近は、所轄もうるさく暴力団との交際を絶つようにと言ってくるようになりました。『(暴力団との関係で)なにかあれば、地方自治体の持つホールを使えなくなるよ』と言われたこともあります。安藤長官からの指令が、所轄にまで行きわたっていたんでしょう。今度の新しい長官がどういう人かわかりませんが、少しは風向きが変わるんじゃないでしょうか」(老舗の音楽事務所)

 次期長官となる片桐氏は、沖縄県警・京都府警の本部長などを務め、警察内部でも「切れ者」として知られるが、先頭に立って引っ張るというよりは、目立たず手堅い仕事をする官僚タイプだという。

 このあと第2、第3の紳助をあぶり出せるか、片桐氏の手腕が注目される。

『週刊現代』2011年10月29日号より

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