東電は「国有化」より、「メキシコ湾BP型ファンド」創設で速やかな対応を菅総理に求められるスピード感と広い視野

2011年04月05日(火) 町田 徹
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 押さえておくと、原子力損害賠償法は、損害保険への加入などを事業認可の条件としている。が、この保険の限度(原発の場合は1カ所につき1200億円)は、賠償の上限ではない。この点で間違った情報が散見されるが、東電には無限の賠償責任がある。つまり、法的には、東電が総資産(13兆2039億8700万円)のすべて注ぎ込んでも損害を賠償する義務があるのだ。

 そして、それでも賄いきれない事態を想定して国に賠償責任を課したのが、原子力損害賠償法の第16条である。「事業者に対し、損害を賠償するために必要な援助を行なう」としたうえで、その援助を「国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なう」と定めている。

避難者や営農者、漁業者への速やかな補償が目的

 話を東電に戻そう。前述のように、国の負担を云々する以前に、東電には、機動的に利用可能な積立金だけでも3兆6000億円あまりの資金がある。

 まずは、ファンド化によって、資金・資力の存在を可視化して、自らの力で責任を全うする姿勢を明確にすべきである。

 そうすれば、銀行団の2兆円近い融資を「緊急融資」などとショッキングに報じる報道や、1年前に比べて8割を超す下落に見舞われた株価に動揺する株主、そして債務不履行(デフォルト)のリスクに怯える東電債の保有者らは、ある程度、落ち着きを取り戻すことができるはずだ。この措置は、いたずらに東電の国有化論や解体論を叫ぶより、よほど実践的と信じている。

 もちろん、経済的な不安心理の抑え込みだけが、この措置の目的ではない。むしろ、このファンドを設置する最大の目的は、避難者や農家、漁師への補償を早急に開始することにある。そうした手を打つころで、避難を強いられている人たちの現下の救い難い苦境を少しでも和らげることが急務なのだ。

 ちなみに、BPの場合、パートナー企業が多かったため、すべての賠償責任がBP1社に帰属しているかどうか争う余地があった。しかし、事態を深刻とみた米議会とオバマ政権は、毅然として圧力をかけ、事態の長期化を許さなかった。

 これに対して、東電の場合、端からそうした逃げ道はない。前述の原子力損害賠償法が、風評被害も含めて、相当の因果関係のある損害に対する賠償を、東電に一元化しているからだ。当然、政府も怠慢を許してはならない。1日も早く機敏な対応を指導する責務があるのだ。これ以上、機能不全や思考停止に陥っている猶予はない。

次ページ  これまでの政府・東電の対応は…
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