経済・財政
解体は必至の東京電力「株価の行く末」と復興財源「とっておきの秘策」
東電が持ちこたえられるのは4兆円まで

 東京電力福島第一原発事故はまだ終息しそうにない。現場では必死に作業しており、それには頭が下がる。しかし、ついに、4月3日、政府は放射性物質封じ込めに数カ月かかることを認めた。

こうなってくると、初期動作に問題があったことが悔やまれる。震災直後の3月12日、菅直人総理は各党の党首を官邸に招き、党首会談をした。そこに出席していた渡辺喜美みんなの党は、すでに原発事故の重大性を認識しており、菅総理に米軍の支援を要請するよう助言した。

ところが、当日の午前中に福島第一原発を視察した菅総理は「大丈夫」と、渡辺代表の助言を無視した。実はその党首会談中に水素爆発が起きたわけだから、すぐにでも米軍に支援要請をしてもいい状況だった。こうした初動動作のミスが、これまで事態の悪化を長引かせてきた。

もう東電・政府より、国際チームに任せたほうがいいだろう。そのほうが今の政府を信頼していない国民にとっていいのではないか。

政府・東電の問題は初動だけではない。震災後、半径○kmと同心円で避難地域が設定された。しかし、放射能拡散は同心円ではなく、地形や風向きに依存する。私は政府に放射能拡散シミュレーションがあることを知っていたので、政府関係者にそれを公開するように言ってきた。ところが、ようやく公開されたのは3月23日になってから、それも動態的なシミュレーションでなく静的な一枚の紙だけだ。事故後から、海外のサイトには日本のデータに基づくであろうシミュレーションが多数掲載されていたにもかかわらずである。

後手後手に回った対応と情報公開の遅さが、不安を増大させている 【PHOTO】Bloomberg via Getty Images


事故対応のほうは現場に委ねるとして、今回の事故で浮き彫りになったのは監督体制のお粗末だ。2000年の省庁再編時からいわれていたことであるが、原子力安全保安院が経産省の植民地であり、文系経産官僚のステップアップポストでしかなく、原子力の専門家がトップにいないという致命的な欠陥が露呈した。

原子力安全保安院が東電をきちんと監督できないのは、東電が経産省から歴代天下りを受けているからだ。元旦付けで、経済産業省資源エネルギー庁の石田徹前長官(58)が退官して4カ月余りで、東京電力顧問になっていた(1月10日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1878 )。

こうして規制企業が被規制者を取り込んで規制を歪めるのは、1982年にスティグラー教授(シカゴ大)がregulatory captureといって理論化していたが、日本でしっかりと実践され、東電福島第一原発事故になった。

事故解明・再生は、経産省の影響力が及ばない独立組織で、資源エネルギー庁を解体するように行う必要がある。と同時に、送電線網の解放を行い、事実上地域独占を見直す電力の自由化が必要となるだ。

といっても、東電は解体するとしても電気事業は継続しなければいけない。となると、破綻金融機関をいったん国有化する金融機関の再生プロセスが参考になる。

JALや金融機関の破綻例を見ればわかる

 そのための第一歩として、東電の財務状況を見てみよう。これは当面の東電株価を見るにも役に立つ。東電株主の4割弱は個人株主だ。これまでは安定業種として長期保有に向くといわれてきたので、株価の行く末が気がかりな人も多いだろう。

原子力事故については、原子力損害賠償法があり、その第3条で「原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる」となっているが、「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない」と免責されている。、東電関係者が「想定外だった」と強調しているのはそのためだ。もっとも免責範囲は明らかでない。政府のさじ加減一つであり、東電にはかなりの責任がかかるだろう。

そのうえで、東電の責任を負うべき範囲を考えてみよう。それは東電資産の毀損のみならず、事故の基づくもろもろの補償まで含まれる。まず原子力損害賠償法で、東電は原子力損害賠償責任保険に加入する義務がある。福島第一原発では東電は1200億円を負担し、それでカバーできない範囲については、国が東電を相手として原子力損害賠償補償契約を結んでいる。これは2010年度予算で1兆6960億円だ。

東電の責任範囲がこの合計の1兆8160億円以内なら、東電の持ち出しは基本的にはない。しかし、今回は、とてもその範囲に収まるとは思えない。

そこで、東電がどれだけの負担に持ちこたえられかというと、純資産額の範囲だ。昨年3月末の東電の純資産は2兆1607億円である。となると、東電の責任範囲が3兆9767億円以内ならば、東電は破綻をまぬがれる。もしそれ以上なら、東電は破綻する。



その場合、電力供給事業を止められないので、100%減資し、社債権者も含めた債権カット、さらには経営者責任が追及されたうえで、一時国有化されるか、関係業界で出資が行われるしかない。いずれにしても、株価は無価値になるだろうし、社債も一部はカットされる。なお、金融機関では債権カットはほとんどないので、東電の場合は公的関与で処理しても、金融機関より公的資金の投入額は少なくなる可能性が高い。

東電の株価の推移を見ていると、震災直後は、半減期3日の原子核数減少曲線に従って低下し、その後は半減期6日の減少曲線になっている(下図参照)。
 



事態収拾が長引くほど、東電の責任範囲が大きくなる。前述のように東電の責任範囲を決めるのは基本的には政府であり、それを少なくすると、政府のほうの補償範囲が大きくなり、世間の反発を招くからだ。

政府が東電をつぶさないから株価はゼロにならないと思い込んでいる人は、これまでの公的関与の例(金融機関、JALなど)をみれば、最終的に株価がどうなるかはわかるだろう。もちろん、東電の責任範囲次第である。

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