菅直人という「風評被害」
この国の総理大臣です、「念のため」
〔PHOTO〕gettyimages

「被災地に行く」と言って、行かない。「原発に凄く詳しい」と自慢するのに、自分で説明はしない。「食べても大丈夫」と言いながら、農家に野菜を売らせない。こんな信用できない総理が、かつて存在しただろうか。まさに「風評被害」だ。

雨の日はお休み

 およそ1200人の被災者が避難し、苦難に満ちた生活を送っている宮城県石巻市渡波小学校。この場所を、あるVIPが3月23日に電撃的に訪問し、人々から拍手で迎えられた。

「痛ましい惨状に、言葉を失った。だが、皆さんの力強く生きる姿に感動した」

 このVIPの訪問には、宮城県警の警備などは付いていなかった。もちろん、先導のパトカーもない。「必要最低限の人員で」との本人の意向で、ヘリで直接、渡波小学校にやってきた。

 石巻市によれば、「事前に着陸の許可と視察の打診はあったが、歓迎も警備も不要との連絡があった。こちらの業務に最大限に配慮してくれた訪問だったと思う」とのことである。

 このさりげなく、かつ颯爽とした「VIP」は、もちろん菅直人首相・・・ではない。日本国民としてはそうであって欲しいが、菅首相はその2日前、「雨が降っている」という理由で、被災地の視察を中止した。

〝お忍び〟で石巻を訪問したのは、米国のジョン・ルース駐日大使夫妻と、米太平洋軍司令官のウィラード大将夫妻である。米国では、福島原発の事故による放射能汚染を避け、日本にいる自国民に避難勧告を出した・・・などと言われている。それでもルース大使らは、同盟国の被災者を激励するため、あえて〝グラウンド・ゼロ〟まで足を運んだ。

 一方、我が国の総理大臣は、雨が降ったからと官邸に籠もったままだった。いったい誰がこの国を救ってくれるのか。絶望的な気持ちが込み上げてくる・・・。

 福島原発で予断を許さない状況が続く中、いま盛んに「風評被害」という用語が飛び交っている。放射性物質が飛び散ったことにより、福島県や茨城県などの農作物が出荷制限となり、結果として、無関係の他の野菜にも不買の動きが広がった。

 現地の農家からは「もう生活していけない」という悲鳴が上がっている。それどころか、放射能を怖れて日常物資の搬送までが滞り、津波でも大きな被害を受けた福島県南相馬市などでは、市内に残る人々に餓死の危険すら出ている。

 はっきり言おう。この「風評被害」の元凶は、菅首相その人であると。

 首相はしょっぱなから、思いつきによって風評を撒き散らした。農林水産省キャリアがこう嘆息する。

「ホウレンソウなどから暫定規制値を超える放射性物質が検出された際、私たちは厚生労働省と協議の上、風評被害を防ぐためどう公表すべきか考えました。そのため、まず官房長官が『直ちに健康に悪影響を及ぼすものではない』と発表することが決まったのですが、長官が会見した直後、総理から頭越しに『出荷制限』の命令が出たのです」

 菅首相としてみれば、「これぞ政治主導。オレの英断。してやったり」というところかもしれない。だが、実際に事態に対処する現場は大混乱。何より、「安全だ」と言う枝野幸男官房長官の舌の根も乾かぬうちに、総理から「野菜を食うな」と言われた形の国民が、もっと困惑した。

 そもそも---。原発事故による放射線の影響についても、菅首相や枝野官房長官は、「直ちに人体に影響はない」などと強弁してきた。なのに、原発近くに自ら赴き、自分で現場を指揮した政治家は誰もいない。

 何より菅首相自身、「行く、行く」と騒いで被災地の自治体に余計な気苦労をかけておきながら、雨が降ったからと行くのをやめた。

 しかも、相談役の笹森清・元連合会長との懇談では、「東日本が潰れるかも」と口走り、首相自ら、国民の不安を煽り立てる始末。

「やっぱり菅首相も放射線が怖いんじゃないか。政府は嘘を言っている」

 もはや菅首相に対する信頼はゼロ。そのため、首相が「安心だ」「大丈夫だ」と強調するたび、国民はいっそう「信じられない」と疑心暗鬼に陥ってしまう。いまや菅首相の存在自体が、「風評被害」そのものだ。

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