長谷川幸洋「ニュースの深層」
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大震災・原発事故「不都合な真実」が突きつける政治、経済、メディアの「パラダイムシフト」

矮小なスキャンダルで国会を止める時代は終わる

2011年04月01日(金) 長谷川 幸洋
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 地震と津波、東京電力・福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故は、日本の政治・経済はもとより思考の座標軸に影響を与えるのではないか。おおげさに言えば、日本人の世界観にパラダイムシフトをもたらす予感がする。

 抽象的に語るより具体的に語ったほうが分かりやすいと思うので、舌足らずになるのを恐れずにずばり書こう。

 第一に、原発事故は福島の怒りを呼び起こした。それは事故を起こした東京電力に向けられるだけではない。人々は「なぜ首都圏の電力を賄うのに、私たちが危険な目に遭わなければならないのか」と問うている。

 信頼できるベテランの科学ジャーナリストによると、原発を事故から守る壁は原子炉圧力容器とか格納容器だけではない。最終的には「距離という『第6の壁』がある」と言われてきた、という。東京と福島の距離は約230キロである。この距離が首都圏の安全性を担保しているのだ。

 彼は「福島に原発が作られた本当の理由は『首都圏から離れているから』です。かつて、あるシンポジウムで専門家がそのことをあからさまに喋ってしまったことがある。彼はひんしゅくを買ったけど、残念ながら本当だ」と語った。

 いまや福島の人々は、この「不都合な真実」に気づき始めている。

 首都圏の繁栄は危険と隣り合わせだった福島の犠牲の上に築かれていた。もしも首都圏が繁栄を望むなら、福島をどうしてくれるのか。同じ問いは避難してきた福島の人々だけでなく、全国の原発立地地域から発せられるようになるだろう。

 これは地域主権の議論でもある。原発による電力エネルギーの恩恵だけを享受して、危険は引き受けない、という非対称な議論は地域主権の考え方と本質的に相容れない。危険性が地域限定である以上、それぞれの地域がどうエネルギーを確保するかは本来、その地域に委ねられるべき問題ではないか。

 これまでは霞が関中央集権体制の下で、福島のような地域が大きなリスクを背負わされてきた。だが、住民たちはもはや簡単にリスクに対して「イエス」とは言わないだろう。自分たちの置かれた立場を自覚するからだ。

 次が米国はじめ外国との関係である。

 米国は地震と津波の発生当初から「トモダチ作戦」と名付けられた救援作戦を大々的に展開してきた。放射能漏れが深刻化してからは、ウォルシュ米太平洋艦隊司令官が指揮をとって、被災者救援だけでなく原発事故にも日米で共同対処する姿勢を強めている。

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