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 東日本大震災による福島第一原発の事故で、政府と東京電力が各方面から非難を浴びている。情報開示の不十分さが不安を拡大させているからだ。

 背景にあるのが、政府(経産省、原子力安全・保安院)と東電の特殊な関係だ。はっきり言えば、ズブズブで密接すぎるのである。

 原子力安全・保安院は原子力等のエネルギーに係る安全及び産業保安の確保を図るための機関。原発などの安全確保のために厳正な監督を行うことになっている。経産省の外局で、有り体に言えば植民地だ。

 一方、東電は独占企業だから、ライバル企業との競争はない。監督するのは政府=原子力安全・保安院だけで、政府さえ丸め込めば、恐いモノなしだ。実際、東電は歴代経産幹部の天下りを受け入れており、今年1月には原子力安全・保安院の上部組織である経産省資源エネルギー庁の前長官だった石田徹氏が、退官後わずか4ヵ月で顧問に天下っている。そうした天下りの見返りとして政府は厳しい監督をせず、また適切な情報開示も行わせることができなかった。安全基準も、いまとなっては甘かったことが明らかになった。

 また、原子力安全・保安院の現院長である寺坂信昭氏は、エネ庁勤務の経験もあるが、前職が経産省商務流通審議官であり、三越や伊勢丹などの百貨店担当をしていた人物だ。経産省が原子力の安全・監視・指導を軽視してきたことを物語る人事と言えよう。

 過去にも福島第一、第二原発や柏崎刈羽原発などでデータ改竄が繰り返されてきたこと、東海村で臨界事故が発生したことなどを見ても、政府と東電のもたれ合いの弊害は明らかだ。はっきり言えば、政府は東電に取り込まれたのである。

 このように、規制する側が規制される側に取り込まれて、規制が被規制側に都合よく歪曲されるメカニズムを「虜理論」(ノーベル経済学賞を受賞したG・スティグラー教授の理論)という。東電の虜になった政府は、国民に対して「由らしむべし、知らしむべからず」の姿勢で原子力行政を行い、今回そのツケが最悪の形で回ってきたのだ。

 それにしても、原発事故に関する政府の情報開示はまったくお粗末で話にならない。テレビでは専門家がいろいろと解説しているが、国民が最も欲しているのは外部への放射線量の情報だろう。例えば、放射線測定データを花粉情報のように地域別に示して提供するべきなのだ。

 実は、そうした情報を提供できるシステムがすでに存在している。(財)原子力安全技術センターが開発した「SPEEDI(スピーディ)」だ。これは「万一、原子力発電所等から大量の放射性物質が放出される事態が発生したとき、線量等を地形や気象を考慮し迅速に予測する」(同センターHPより一部抜粋)もので、'10年度予算には7億8800万円が計上されている。いまこそこのシステムを活用すべきなのに、政府がこれを使った情報発信を決めたのはようやく23日になってから。「スピーディ」とは、ブラックジョークにしか聞こえない。

 賢明な読者はもうお気づきだろうが、この財団法人も天下り機関だ。役職員16名中4名が官僚OBで、元科学技術事務次官だった石田寛人氏が会長(非常勤)として天下っている。

 政府と東電のように天下りを介して規制を歪める関係は、この国の至る所にある。被規制側が規制の主導権を握るのだから、分野によっては危険極まりない。

 日本の総点検が必要だ。


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